タルパ戦争 File20 心霊タクシー
京都駅に到着した浮島⋯⋯
本来はそのまま実家である大社へ向かう予定であったが、許嫁の言い付けに従い、彼女のところへ直行することとなった。
そこは⋯⋯
嵯峨野からさらに少し先を行った、京都市北西部の山間にある場所だ。とりあえず、馴染みの個人タクシー運転手に連絡を取り、配車を頼んだ。
「あっ、もしもし、浮島ですけれども⋯⋯」
《浮島君?どうしたの急に?もしかして、今、京都駅にいるの?》
「すみません、急用で帰省するつもりが⋯⋯先に彼女のところに行かなくてはならない状況になってしまいました⋯⋯配車、今、無理ですか?」
《今さら何言ってんの。心霊タクシーはいつでも配車可能だよ。今すぐそっちへ向かうよ》
「急なお願いですみません。よろしくお願いします」
浮島は切電する⋯⋯
そして、心霊タクシーの到着を待つことにした。
この京都は⋯⋯
特別な場所へ行くためには、特別なタクシーを呼んで、それに乗って行く必要があった。
以前、京都市内には霊能力を持った個人タクシー運転手が10人前後はいたが⋯⋯青森県恐山のイタコと同様、高齢化と後継者不足による自然減で、現在は浮島が配車依頼をした運転手が最後の一人となっていた。
そうこうしているうちに、心霊タクシーがやって来た。
見た目は普通のタクシーであるが⋯⋯わかる者にはわかる、強いオーラを発していた。
「お待ちどおさま!」
60代くらいの高齢男性が運転していた。
ドアが開かれると、浮島はすぐに車内へ乗り込んだ。
「レゴさん!元気そうで何よりです!」
「じゃ~行くか。嵯峨野から先へ行った⋯⋯例の場所だよね。浮島君も大変だね。でも、悪い嫁さんにはならないと思うよ。彼女は」
レゴと呼ばれた運転手にそう言われ、苦笑いをする浮島⋯⋯
このレゴ⋯⋯
実はタルパ界隈創世期における著名なタルパーで、タルパ錬成に関しては、浮島の大先輩にあたる人物でもあった。
浮島ほどではないが強い霊能力も持っており、京都市内の霊道や結界を知り尽くしていた男である。
そして、ドライビングテクニックは⋯⋯
藤原拓海そのもので⋯⋯若い頃はパトカーの追跡を余裕で振り切っていた。