タルパ戦争 File19 未知との遭遇
薄暗い室内で、パソコンの画面を見つめる男がいた⋯⋯
「凸都大学オカルト研究会か⋯⋯」
不敵な笑みを浮かべながら、木口からのメールを確認していた。そう、この男の名は更梨大祐⋯⋯
「さて、どうしたものか⋯⋯」
更梨は両手を頭のうしろに組むと、宙を見つめるように思案に暮れた。更梨は良く言えば観察眼に冴え、直感力の強い異能の人物と言えるが⋯⋯しかし、それが仇となり、多くの誤解を生み出していた。
更梨の性格は悪くはない。
一応、付き合っている女性もおり、普通の青年とそう大差はない。
だが⋯⋯
慎重が過ぎる一面はやや難あるものだった。
「おそらく、これも罠だろうな」
更梨はその逸出した出自と経歴から、しばしば、良からぬ人物や集団から誘わる機会が多かった。自称霊能者の詐欺師から得体の知れない新興宗教のカルト集団まで⋯⋯警戒はせざるを得なかった。
「俺の霊能力を確かめる気だろうが⋯そうは行かないぞ。逆に俺がお前らを看破してやるからな。覚悟しておけ」
更梨は躊躇うことなく⋯⋯
Deleteキーを押下して木口からのメールを消した。そう、すでにタルパ戦争の前哨戦が開始されていたのだ。
「木口⋯か。こいつ、浮島と言うヤツに鍛えられたヤツか?」
更梨は立ち上がると、そのまま、ベランダに出た。更梨は羽田空港近くにある海岸沿いのマンションで暮らしていた。
タバコに火を付け、海を見つめ続ける⋯⋯
その直後である⋯⋯
突然、銀白色に光るボール状の物体が目の前に現れた。
「えっ!?」
これに驚く更梨⋯⋯
UFOのようにジグザグに飛行し始め、まるでこれを今目撃している更梨を試すかのような挙動を見せつけて来た。
いや⋯⋯
本当にUFOらしい。
思わず口元からタバコを落とす。
オカルト研究家で霊能力者でもあった流石の更梨も⋯⋯
これには驚いた。しかし、更梨が撮影しようとスマホを取り出そうとした瞬間、UFOは視界から姿を消していた。
「俺は⋯⋯流石にこの俺でも、UFOは初めて見たぞ」
空のあちこちを見回すも、UFOはどこにも見当たらなかった。
旅客機が轟音を立てながら真上を通過して行く。