タルパ戦争 File18 京都へ
浮島は⋯⋯
急遽、京都の実家である大社へ帰ることに決めた。
今後のため、自身の霊能力を最大限発揮できるよう、事前に調整しておく必要もあった。
大学の下宿先へ戻ると、急いで荷物をまとめ、東京駅へ向かった。
売店でコーヒーとサンドイッチを買うと、急いで新幹線に乗車した。夏休み期間中ともあり、車内はやや混雑していたが、席に座れない程でもなかった。新横浜駅を過ぎたあたりだろうか⋯⋯
「そうだ、念のため木口君にもこのことは知らせておくか⋯⋯」
浮島は木口へ京都の実家へ一時的に帰る旨をメールで伝える。浮島は陰陽師の師匠ともなる父に霊的鍛錬を付けてもらうつもりだった。
いろいろ、相談したい話もあった⋯⋯
とりあえず、京都に到着するまでの間、タルパ界隈に仕掛ける実験のシナリオを考え始める。
「さて、だいたいの話の流れはこんな感じかな⋯」
Google Keepに筋書きとなるシナリオを書きしたためた。
次の瞬間である⋯⋯
浮島の脳裏に強烈な力が加わり、離人症のような症状に襲われ始める。
「なっ!これは⋯⋯今はやめろ⋯⋯新幹線の中⋯⋯だ」
浮島は体が硬直し始め、座席の上でそのままガクンと眠り込んでしまった。強制的にダイブさせられた状態だ⋯⋯
「これから京都に来るのか?わっちのところに来てくれるのか?」
「す⋯⋯すまない⋯⋯今回は急な要件で⋯⋯そちらには立ち寄れない」
「嫌じゃ。久々にわっちと〇ぐわろう」
「それなら共有ダイブで⋯⋯週一のペースで済ませているだろう⋯⋯」
「ダイブ越しではもの足りなくてつまらんのじゃ」
妖艶な狐娘との対話が始まった。
例の⋯⋯浮島の許嫁の生霊、ダイブ体である。
「いや、今回はホント⋯⋯急な要件なんだ⋯⋯すまない、今度のお盆には必ず君のところに行くから⋯⋯」
「嫌じゃ。待っておるぞ。来なかったら⋯⋯どうなるか分かっておるな」
「⋯⋯」
直後、浮島は開放された。
気がつくと、すでに名古屋を通過していた。
「仕方がない⋯⋯真っ先に彼女のところへ向かうか。後が本当に怖い⋯⋯僕は将来、あんな怖い女(ひと)と結婚することになるのか」
激しく落ち込む浮島⋯⋯