Episode 15 伝説の魔導書を求めて
一方、プラスヨは旧市街地区の地下商店街を歩いていた。
トットフォーから⋯⋯
港に停泊中の空母を襲撃するのは無謀と判断され、その代わりになる物を探して来るように言い付けられていた。
それは⋯⋯
一冊の魔導書であった。
ただの魔導書ではない。思念凶獣ルーナエルバードを召喚するための伝説の魔導書であった。ルーナエルバードは⋯⋯たった一体で中堅国の空軍力に匹敵する。それを複数体召喚したともなれば⋯⋯
旧市街地区の地下商店街に「アヴ」なる魔法専門の古書店があり、そこの店主が何か知っているらしい。
ただ、店主は変人で身長は2m近くもある女性らしいとの噂だった。
「この店かしら?」
プラスヨは本当に古びた⋯⋯傾きかけの古書店を見つけた。
店の看板は文字が剝げ落ちてはいたが、辛うじてアヴと大きく書かれているようであるのはわかった。
プラスヨは店のドアを開けると、中へ入った⋯⋯
カラン♪コロン♪
「あら、いらっしゃい。魔法使いの方かしら?」
確かに⋯⋯
噂通り、やけに背の高い女性が奥のレジに座っていた。座った状態であったがプラスヨよりも目線は上だった。
「あっ、いえ。私は魔法使いではありませんが、魔法使いの方から買い物を頼まれまして⋯⋯」
「何をご所望?魔導書?魔法用品?」
「⋯⋯」
何か訳ありそうな様子を悟った店主、アヴ・アリエールは躊躇うことなく次の言葉を口にした。
「それとも⋯⋯禁断の魔導書に関する情報でも欲しいのかしら?」
「ルーナエルバード⋯⋯知っているかしら?」
しばし、意味不明な沈黙の時間が過ぎる。アヴは目を閉じて、深いため息をつくと⋯⋯こう言った。
「情報提供料はそれなりになりますよ。あと、必要とあらば現地ガイドも承ります⋯⋯ただし、命の保証はありません」
「ルーナエルバードの召喚魔法が記述された魔導書は⋯⋯地獄の一丁目にでもあるのかしら?」
「地獄よりも地獄かもしれません。ところで、どうしてそんな魔法を欲するのか私には理解が及ばないのですが?まさか、あなたはヲティ⋯⋯」
プラスヨはアブが怪訝そうな表情へ変わり始めたのを察して、鞄から札束を取り出し、レジ台の上に放り投げた。