Episode 12 回収作戦
ヲティスタン共和国南部の港湾都市、カネガネグラ⋯⋯
NATTOの艦隊が集結し始めていた。
その中でもガトー公国(ガ島)の空母打撃群が最大勢力を誇った。簡単な補給を済ませ次第、再び洋上へ展開する予定だ。
「じゃ、B子ちゃん。空中管制頼んだよ」
「艦長、ちゃん付けはええ加減やめてくれ。部下に示しがつかん」
「ははは、すまないすまない。B子中佐。とりあえず、NATTOの合同基地まで車を送るようにさせるよ。出発は明朝出航時のタイミングでいいかな?」
「わかった。頼むわ」
タイゾー樫田准将は⋯⋯
アットホームな艦長として海軍内で多くの者から慕われていたが、どこか調子の狂う男でもあったため、彼との対話に困る者も少なくはなかった。
そんなゆるい感じの空気の漂うブリーフィングルーム⋯⋯しかし、樫田の次に発した言葉に、誰もが緊張した。
「ヲティスタンにシェアリングされたタルパニウム爆弾の件だが⋯⋯」
本来はユセリアとその息のかかったアナテスタン共和国、ウィキスタン共和国に対する抑止力の一環で、ガ島がヲティスタンに供与したものであったが⋯⋯国内情勢が不安定化しつつある国に核配備はリスクである。
実は⋯⋯
ガ島の本当の目的は核回収で、ヲティスタン政府軍への加勢は表向きの理由に過ぎなかった。すでに水面下で事務レベルの協議も進んでいた。
「しかし⋯⋯この国の現在の首相は厄介だ。態度が曖昧で⋯⋯正直、何を考えているのかわからん節がある」
樫田は深い溜息をつく。
重苦しい空気を少しでも緩和させようと⋯⋯B子はあえて分かり切った質問をする。
「配備場所は首都近郊やな?例の実験飛行隊のいる基地か?」
「うん、そこには我が国の技術者もいる」
「そこまで飛ぶ必要があるのか⋯⋯首都は内陸奥深くや。正直、今のヲティスタンは⋯⋯何か妙な不安を感じる」
「とにかく、回収前提の作戦行動を開始する。背広組の連中があと数時間以内に何らかの結果を出すだろう」
一同、起立して樫田に敬礼する。
B子は自分の個室へ戻ると身支度を始めた。そこで超問題エースパイロットであるポクシーがやって来た。
「よぉ、今度もよろしくな!」
B子は顔を引きつらせる。