Episode 11 アジト
ヤマダハルの歓楽街の一角にある、とある雑居ビルの一室⋯⋯
そこはヲティスレ軍の秘密のアジトだった。歓楽街のあちこちにこうした隠れ家をいくつか分散させていた。
今はそこからヲティスタン全土に散らばる同志へ指令が出されていた。
エルフの神殿から強奪して来た金庫を、どうにかして開けようと四苦八苦するトットフォーとキンカの二人がいた。
「なかなか開かないわね⋯⋯」
「トール魔法使うと中の紙幣まで燃えてなくなっちゃいますかね?」
「強力過ぎるからあれはダメだわ」
トットフォーは指先だけに魔力を集中させて、鍵をこじ開けようとしたり、鍵を焼き切ることができないか⋯⋯いろいろ試す。
その時、ドアからノックする音が聞こえて来た。キンカはドアの方へ向かうと、例の合言葉を口にする。
「お茶漬けと言えば?」
しかし、返答がない⋯⋯
が、次の瞬間、三つもあったドアの鍵が次々と勝手に開錠されて、ドアがあっけなく開かれてしまった。
キンカは反射的に拳銃を抜いて、ドアの外に立っていた人物の眉間に突きつける。わすかゼロコンマうん秒の早業だった。
「おっと、危ないわね」
「あなたが悪いんでしょ!プラスヨ!」
両手を軽く上げる⋯⋯アルミホイルのお面を装着した女性が立っていた。
「あれ、プラスヨ来たの?」
「いろいろ報告がありまして⋯あれ、その金庫?どうしました?」
「あなたなら開けられるかしら?開けられずに困っていたのよ」
トットフォーがプラスヨに金庫の開錠を頼む⋯⋯
プラスヨは元々プロの泥棒であったため、こういうのは得意だった。
プラスヨは金庫に耳を当て、鍵と格闘しながら、カネガネグラの状況をトットフォーに伝える。
「ガ島の空母が入港した?」
「放置すれば砂漠地帯や山間部で活動している同志たちが苦戦しますわ。許可さえ頂ければ⋯⋯港にいる間に」
「そうねぇ」
カチャ☆
「開きましたわ」
中にはヲティスタン紙幣がたくさん詰められていた。
「また、首相官邸のあいつから情報が取れるわ。この国の木っ端役人はワイロをすぐに受け取るからちょろいわ」
トットフォーは顔をにやけさせながら、そうつぶやいた⋯⋯