タルパ戦争 File16 家族の知られざる一面
更梨と言う男は、用心深い人物として知られていた⋯⋯
「やはり、一筋縄ではいかない男か⋯⋯」
浮島はそう呟いた。
とりあえず、しばらく様子を見て、反応がまったくないようであれば、自分から再度連絡して見ると木口に伝えた。
「座敷わらしの方だけど⋯⋯実験開始の日まで、あまり意識せず、これまで通りの生活を続けておいて欲しい」
「わかりました」
「妹さんとの件は誰にも言わないから安心して欲しい。とりあえず、そう言う関係もあるから、実験はこの家で行う。いいね?」
「はい、お願いします!」
「ただ、腑に落ちない点がまだある。どうして⋯⋯座敷わらしと誤認させるような容姿に化けているのか⋯⋯何か心あたりない?」
「いえ⋯⋯これと言って⋯⋯」
「発生型タルパはアニメや漫画のキャラクター、今様な容姿をしたものが多くなるし⋯⋯生霊なら本人の生き写しとなることが圧倒的に多い。なぜ、座敷わらしなんだろう?意図的な要素があるようにも感じられるんだ」
「意図的?」
「これは例えばの話だけど、妹に知られざる一面がある可能性だ。具体的には自身が霊能者として自覚しているとか⋯⋯本当に何か心あたりない?」
「普通の女子高生だと⋯⋯僕は⋯⋯」
「いや、ごめん!饅頭、美味しかったよ。おじさんに宜しく!月曜日、サークル部屋で会おう!じゃ」
浮島はそう言い残すと帰って行った。
浮島が帰った後、木口は零を呼び出す⋯⋯
「零、浮島さんとの話。全部、聞いていた?」
「ちゃんと聞いていたよ」
「僕は彼女(座敷わらし)をまったく感じられないんだけど、零は対話できるんだよね?」
「できるけど⋯⋯正直、苦手だな」
「えっ、愛くるしい女の子だって、ちょっと嬉しそうな顔してたじゃない」
「あ、いや、それは⋯⋯たしかに、彼女は僕も魅力的に感じる。正直、僕の好みかもしれない」
「僕に嫉妬した?」
「浩一の意地悪!」
零は顔を真っ赤にしてはにかんだ。
「ははは、ごめんごめん。ところで、たしかにとか、かもしれない⋯⋯とは、どういうこと?」
「今の話は表面的なものに過ぎない。彼女の本心は恐ろしい⋯⋯一回だけそれを垣間見たんだ」
零の表情が急に真顔になる。