タルパ戦争 File15 忘れたい過去
「なるほど、実の妹さんとそんな過去があったのか⋯⋯」
木口からの説明を聞き、微妙ながらも納得する浮島⋯⋯
肩を落として項垂れる木口⋯⋯
「あの、浮島さん⋯⋯ちょっと、気になる点があるんですが⋯⋯座敷わらしを浄化したら、妹にも何か影響ありますか?」
「そうだねぇ⋯⋯さっき、発生型タルパとは言ったが、生霊みたいなもんでもあるしねぇ⋯⋯影響はあるだろう」
「やはり、生霊返し的な何かですか?」
「そうだねぇ⋯⋯妹さんが霊障にかかる恐れがある。それも強力な⋯⋯」
しばし、二人の間で気まずい空気が流れる⋯⋯
「よくよく冷静に考えて見たら⋯⋯木口君の家系は立派だ。おじさんも銘菓を作る職人だし、経済的に恵まれているいるのは座敷わらしのお陰じゃない。先祖代々の血筋だよ。ご先祖様の墓参りは欠かさない方がいいね」
「⋯⋯」
「とりあえず、座敷わらしと妹さんを霊的に切り離すしかないな⋯⋯それが残された唯一の方法になる」
「具体的にどうやるんです?」
「今度、タルパ界隈に実験を仕組むだろ?一番、悪目立ちしたヤツに⋯⋯共有ダイブを通じて押し付けようか。僕の霊能力を使ってね」
「いいんですか⋯⋯うかつに使って」
「霊能力まで使うつもりはなかったけど⋯⋯やることにする」
「押し付けられて人はどうなりますかね?」
「その人のタルパになるだけさ。発生型タルパかイマジナリーフレンドを得たと喜ぶんじゃない」
「それで妹も霊的に安全になるんですね」
「でも、妹さんと一度きちんと話し合って、互いの気持ちを整理させておいた方がいい。また、同じ状況が発生するかもしれない」
息を呑む木口⋯⋯
「血筋だねぇ。霊能力も遺伝するとは聞くが⋯⋯どうやら、木口君の妹さんがそうらしい」
「妹も霊能者の資質があると?」
「今度、帰国したら一度会っておきたいな」
「わかりました⋯⋯ところで、更梨さんの件なんですか⋯⋯」
「どうした?」
「連絡してもまったく応答がないんです」
「昨晩はXで頻繁に投稿していた様子だが⋯⋯」
「飲み会は彼との接近が目的だから、彼の都合がわからないとスケジュールは組めない。他の大学へ誘いもかけられない」
思案に暮れる浮島⋯⋯