新たなる物語の予感
ダイブ界の異変に呆然とする文磨⋯⋯
次の瞬間である。
「文磨ぉおおおおお!」
ゴンの悲痛な叫び声が⋯⋯
家の中から聞こえて来た。我に返った文磨が慌てて中へ戻ると、裏庭の窓辺で⋯⋯今度はゴンが愕然としていた。
ゴンは体を震わせながら、窓の外を見ていた⋯⋯
「なっ!?」
文磨も再び愕然とする⋯⋯
裏庭の先は、見晴らしの良い海岸であったはずだ。しかし、そこは海岸でなく、アスファルトで広く舗装された⋯⋯そう、空港が建設されていたのだ。共用空港らしく旅客機や戦闘機がたくさん並んでいる。
その直後である⋯⋯
大型旅客機が爆音を轟かせ飛んで来た。
どうやら、目の前の空港に着陸するようだ。文磨とゴンの二人は⋯⋯両手で耳を抑える。
「文磨ぉ、飛行機の音がうるさくてたまらないよ!」
「なんじゃこりゃ⋯⋯」
テレビからは⋯⋯
枝豆島なる聞き覚えのない島の天気予報が流れていた。
どうやら⋯⋯
文子がダイブ界で作り上げた理想郷は、誰かさんのダイブ界と重複して、その誰かさんのダイブ界での主要拠点となる⋯⋯ガトー公国と言う国に統治され、枝豆島と言う地名に変えられてしまったようだ。
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はまぐり、艦長室⋯⋯
C子はボールペンを鼻と上唇の間に挟み、腕を組み考え事をしていた。今後の補給について考えあぐねていた。
「上陸班だけを残して、いったん⋯⋯いや、本国でなく反対側の枝豆島へ行くか⋯⋯う~ん、然したる理由はないから、後で多数決やな」
コン☆コン☆
「なんや?入っていいぞ」
「お仕事ご苦労様です」
「ちょ、おまえ⋯⋯どこから入って来た!?」
「死神はいつだって神出鬼没ですよ」
ジェーン・パックマンの登場である。死神は海中に潜む潜水艦の中にも現れることができるらしい。
「たしかに、毎日やれとは言いましたが⋯⋯補給に限り、一週間くらい間を空けても構いませんよ」
「乗員の休養も兼ねたいがええか?」
「いいですよ。でも⋯⋯後で仕事が大変になるだけですけど。補給で離れている間も、あっちの世界から続々とやって来ますので」
「仕事が溜まるだけかいな⋯⋯」
天井を仰ぐC子。