第87話 国家機密
雑居ビルの地下店舗で、一人、占い館を営むシシル⋯⋯
今日はどうやら特別な日となりそうだ。
まもなく、浮島と木口がやって来る。シシルを含めた三人で、今後の日本におけるタルパ界隈について議論が交わされ、方策が決められる予定だ。
とりあえず、シシルは一階ビル正面ホールの案内板に、本日閉館の札を下げに行く。占い館の閉店時間は⋯⋯まぁ、どこも曖昧な傾向だ。
そして、地下へ戻ろうとした際である⋯⋯
「あの、もしかして、シシルさんでいらっしゃいますか?」
突然、シシルに話かけて来た者が現れた。
浮島の話によると、特別ゲストも招くとの話だった。だから、今日は四人になる。そして、どうやら⋯⋯その四人目が一番乗りしたようだった。
「はい、そうですが⋯⋯どちら様で?」
「私⋯⋯こう言う者です」
20代後半くらいの女性だろうか⋯⋯
シシルに学生証を見せてきた。名前は林千夜と言い、文京区にある名門私大の大学院生であった。
「浮島さんからの連絡でやって来ました」
「あなたが四人目の⋯⋯ですね?」
「はい」
「わかりました。手狭なところですがどうぞこちらへ」
シシルは階段を降りながら話す⋯⋯
「先ほど、浮島さんと木口さんは少し遅れるとの連絡がありました。とりあえず、中で待ちましょう」
そして、シシルは林を占い館の中に招き入れ、順番待ち用のソファに座らせた。少しキョどる林⋯⋯どうやら、この手の店に入るのは初めてらしい。
「コーヒーと紅茶、どちらにします?」
「えっ⋯⋯あ、こ、コーヒーで⋯⋯お願いします」
「二人が来るまでの間、いろいろ聞いていいかしら?」
「えっ、ええ!なんでも答えます!」
林曰く⋯⋯
自分は大学で浮島の要請に基づく極秘研究をしているとのことだった。心霊探知や心霊防壁に関する基礎研究をしているらしい。
先月にもダイブ界経由での国内侵入を検知する心霊レーダーの開発にも成功したとの話だった。
「ねぇ、それって⋯⋯国家機密レベルの話じゃない?私にそんな話をしていいの?」
「えっ?シシルさんは政府のエージェントですよね?」
「まぁ、そう言われたらそうね」
苦笑いをするシシル⋯⋯