第82話 それぞれの夏
夏を制する者は受験を制する⋯⋯
夕菜は午後も猛勉強に勤しんだ。夕菜が勉強している間は、ポンスケは夕菜のベットの上で丸くなっていた。
「ふ~う、ちょっと疲れたぁ~休憩、休憩っと」
「夕菜ちゃんお疲れ!」
「ポンスケ!おいで!また、一緒におやつ食べよう!」
「夕菜ちゃん!あまりたくさん食べると太っちゃうよ!」
「大丈夫!私は太り難い体質だから!」
ビスケットを二人頬張って楽しむ。
そして、夕菜は再び、スマホのXをチェックする⋯⋯穂都とゴンの二人から返信のDMが来ていた。
「穂都ちゃんとゴンからだ⋯⋯今日はきっと忙しかったんだろうな」
まず、穂都からの返信内容に驚いた⋯⋯
新しい服を貰ったと、試着した様子を映し出した自撮り画像を添付したDMが送られて来ていたのだ。
「すごい!穂都ちゃん可愛い!」
次にゴンからのDMだが⋯⋯
マスターがこれから婚活を開始するので、しばらく低浮上になるが、夕菜には逐一報告するので楽しみに待っていて欲しいとの内容だった。
「そっか、文子さん⋯⋯新しい人生に向かって歩き出すんだね」
「夕菜ちゃんも頑張ろうね!」
「うん、そうだね!」
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その一方で、過酷な人生を歩み出した者もいた。厨房に配属されることとなった千夏であるが⋯⋯料理長が〇東連合のM氏に激似した強面の人物で、ファースト・コンタクトの時点で地獄確定となった。
「社長の知り合いだか何だか知らんが、オレにはうんなもん関係ねぇ」
千夏は事あるごと、料理用のステンレスバットで後頭部を叩かれ、強面料理長による地獄のしごきが始まった。
パコーン☆
「痛っ!」
「おい!コラ!それちゃうやろ!」
「す、すみません」
千夏は涙目になりながら作業に勤しむ。
ただのバイトとは違う⋯⋯
バックれようものなら、自宅で父、岩鉄の制裁が待っている。
流石に、茂夫が仲裁に入ろうとした⋯⋯
「おいおい、あまり頭は叩かないでくれよ。一応、女の子だし」
「社長!オレは誰であろうと一度部下にしたもんは徹底的にしごきますから」
「ほどほどに頼むよ」
「ええ、全力でほどほどに鍛えますわ!」