第79話 転生後の再会
冷静に考えてみたら⋯⋯
先ほどの黒塗りの高級車には、いろいろと不自然な点が多いことに⋯⋯徐々に気づき始めていた。
「今時、カーナビ積んでない車って⋯⋯あるのかしら?」
文子は手をあごに付けて考え込む。
ゴンは体を震わせ、視線が定まらず、地面の上で立ち尽くしていた。とりあえず、この場に居続けても致し方ない。
「ゴン、お家へ帰ろう!おいで!」
文子はゴンに、自分の背中に憑くように促す。文子は外出の際、ゴンを背中に憑かせて歩いていた。
:
「うむ、なかなか良さそうなお嬢さんだ⋯⋯玉さんはどう思う?」
「私も旦那様と同じ意見ですわ。倫太郎ぼっちゃんに相応しいお相手かと」
「ふむ、玉さんがそう言うなら間違いないだろう」
「ただ⋯何か、どことなく懐かしい感じもしましたわ⋯⋯」
少し困惑気味な表情で答える玉⋯⋯
そう、先ほどの黒塗りの高級車に乗っていたのは⋯⋯
倫太郎の父と玉の二人であった。なぜ、倫太郎の父は、一介の女中に過ぎない女性を連れて来たのか?
「懐かしい感じ?それは良いものなのか?」
「もちろん、良いものでございます。安心してください」
「そうか!玉さんのカンは絶対に当たるからな!これで安心だ!文子さんは倫太郎の嫁第一候補だな」
黒川家に長年住み込みで働いている⋯⋯
この玉と言う女性には不思議な力があった。カンが鋭く、どんなものも見抜く能力があることで⋯⋯黒川家の一部の者に知られ、頼られていた。ちなみに、倫太郎本人はまだそのことを知らなかった。
倫太郎の父が国会議員の地位まで上り詰められたのも⋯⋯
玉の助言のお陰でもあった。
「そろそろ、倫太郎にも玉さんの正体について明かそうと思う」
「そうですか、いよいよですか」
「うむ、これからも黒川家のことを頼むぞ」
玉は笑みを浮かべ軽くうなずいた。
:
背中に憑かせると言うより⋯⋯
ゴンの肩車だった。
「ねぇ、ゴン。さっきの⋯⋯本当?」
「間違いない!玉ちゃんだ!また、会いに来るよ!」
ゴンのカンの鋭さは文子も認めるところだった。ゴンのカンは一度もはずれたことがなかったからだ。