第58話 生きるために笑わない人達
戦果を確認するため、C子は潜望鏡深度までの浮上を指示する。そして、C子は嫌らしい笑みを浮かべながら、潜望鏡を覗き込む⋯⋯
「えらいこっちゃ状況になっておるようやな」
ユセリア艦艇の甲板上では⋯⋯
乗組員同士での殴り合いが始まっていた。
笑いを堪えるため、手近にいる者同士で「笑うな」「笑うんじゃねぇ」「誰か俺の笑いを止めてくれ」と言った感じに⋯⋯
適当に殴り合いを始めるらしい。
そして⋯⋯
しばらくすると、ユセリアの船は惚気島近海から姿を消した。
「これで明日から派手な作戦行動ができるな」
ガトー公国が惚気島で何か目立つことをすれば⋯⋯
たちまち、ユセリアが地獄へ文句を言う構図がお決まりだった。地獄側の負担も軽くする意図から、目立たないように事を成すが良かった。
「潜望鏡深度に上がったついでや!本国へ通信チャンネルを開け」
ポンスケの処遇について問い質すためだ。
「本国との通信チャンネル開きました!」
「あ、もしもし、実はなぁ⋯」
C子が事情を説明すると⋯⋯あっさり引き渡しOKの回答が返ったきた。そして、そのための部隊を、今すぐ惚気島へ派遣するので、到着次第、ポンスケを派遣した部隊へ引き渡すよう指示された。
「回収班のことですかね?」
航海長がC子に意味深なことを言う。
「せやな。ロシアから亡命して来たやつらだろう。すぐにやって来るやろ」
「上陸の準備をしておきますか?」
「せやな」
:
一時間後⋯⋯
はまぐりに通信が入る。
《こちら、回収班!はまぐり、応答せよ!》
「こちらはまぐり、引き渡しは目の前のビーチで良いか?」
《構わない。ではビーチに着陸する》
しばらくすると、一機のブラックホークがやって来た。
今度はランカがポンスケと一緒にゴムボートに乗り、会合地点となる砂浜へ向かう。そして、ブラックホークとゴムボートが同時に到着する。
ブラックホークから大柄の男が一人出て来た。
「Я пришел забрать вещи.(ブツを受け取りに来た)」
「じゃ、元気でね」
ランカはポンスケの頭に軽いキスをすると、回収班に引き渡した。