第49話 海軍の建前

投稿日 2024.02.08 更新日 2024.02.10

 これまでの経緯を詳しく話す夕菜⋯⋯

 C子は黙って聞き続けた。

 ただ、眉間にしわを寄せており、何か気まずいものも徐々に感じ始めた。とりあえず、一通り言うべきことを言い終える。

 しかし、謎の沈黙がしばし続く。

 まさか、ポンスケの引き渡しを拒否されるのでは⋯⋯

 ポンスケはランカの腕の中に抱きしめられたままだった。

 次の瞬間、C子が口を開く。

「どうやら、パックマンのことはなんも知らんようやな⋯⋯」

「えっ?パックマンって⋯⋯なんですか?」

「いやなぁ、そいつは死神で、今、うちらと取引をしている」

「し、死神!?私、なんか呪われているんですか!?」

「安心せぇ、どうやら無関係のようや」

「⋯⋯」

「逆にお前ならなんか知っとると思ってな。ここまで連れて来た」

 どうやら、今後の取引を有利に進めるため、ジェーン・パックマンと言う死神の弱みを探っていたらしい。

 まぁ、夕菜には関係のない話だ。

「あの、それでポンスケは⋯⋯」

 これに問いに対して、腕を組み悩み続けるC子⋯⋯

 頭を後ろに倒し、天井を見つめる。

「せやなぁ⋯⋯お前がウソついているように思えんし⋯⋯ただなぁ」

 C子曰く。

 こっちの世界では、獣人にも人権があり戸籍があり、勝手に連れ出せば誘拐の罪にも問われかねないと言う。

 また、ガトー公国海軍で保護した以上、はいそうですかと⋯⋯安易に引き渡せないとも告げられ、結論は先送りとなった。

「ただ、このポンスケいうウサギ⋯⋯いつどこから侵入したんやろな」

 謎は残されたままとなったが⋯

 次に、夕菜は今後の流れについて説明を受けた。

 ぶっちゃけ、もう二度と惚気島にやって来て欲しくないので、必要な手続きをした後、そっちの世界へすぐに引き渡しに行くので、それまで待っていろとのことだった。まぁ、夕菜の主張は認められるだろうとの話だった。

「わかりました。いったん元の世界へ帰ります」

 しょんぼり顔になる夕菜⋯⋯

 直後、目覚まし時計の音が聞こえて来た。

 はっとする夕菜⋯⋯

「私、もうそろそろ行きますね」

「おう、楽しみに待っとれ」