第41話 修羅場
弁護士は書類を掲げる⋯⋯
次の瞬間、メンヘラ女が大きな金切り声を上げて発狂した。メンヘラ女の突然の豹変に、法廷内にいる誰もが驚き、両手で両耳を塞いだ。
「ちくちょー!やめろ!このやろうぉおおお!」
メンヘラ女が自分の弁護士に掴みかかった。自分の弁護士にである。これに驚く弁護士⋯⋯メンヘラ女が弁護士のネクタイを引っ張り回す。弁護士はネクタイを強く引っ張られ首が締まり、白目をむいて意識を失いかける⋯⋯
法廷警吏の鬼がこれを止めようとするも、メンヘラ女の蹴りが股間にクリーンヒット、法廷警吏の鬼はその場で悶絶して倒れてしまった。
法廷内は一気に修羅場と化して、顔から血の気が引く閻魔大王⋯⋯
パン☆パン☆パン☆
「はい!やめて!やめて!お願いだからやめて!」
閻魔大王はガベルを鳴らしまくり警告するも、一向に治まる様子がない。閻魔大王が書記官の方を向き指示を出す。
「お~い、誰か。応援の警吏を呼んで来て!」
次の瞬間、閻魔大王の側頭部に、メンヘラ女の投げた何かが吹っ飛んで来て当たり、裁判官席から横転するように床に倒れた。
警吏が10人ほどやって来て、ようやく、混乱は収まった。
法廷内はぐちゃぐちゃだ。
「ちょっと休廷します!てか、もう今日はおしまい。続きは明日!」
閻魔大王は手で痛みを抑えなら立ち上がる。
「おやおや、大変な状況ですね」
気が付くとジェーン・パックマンが法廷の出入り口に付近に立っていた。閻魔大王は彼に気づくと話をするため傍に歩み寄った。
「パックマン、お願いがあるんだけど⋯⋯」
「わかってますよ。彼女をデスタウンに留まらせるようにしますよ」
「もう、地獄も限界⋯⋯あんなの、流石に収容できないよ」
「地獄以上に地獄な場所がデスタウンにありますよ」
「それで改心して貰えば、地獄の手間が省ける⋯⋯」
「とりあえず、試験的に半年の契約をしてありますけど⋯⋯結果が良ければ、正式に代用地獄の運営を依頼します」
パックマンの話によると、さらに現世のメンヘラ女も、夢を通じてお仕置きをすることで、希死念慮の消失も試みるとのことだった。地獄にこれ以上余計な者がやって来ないよう、抑止的な対策が講じられ始めた。