第41話 修羅場

投稿日 2024.01.18 更新日 2024.01.18

 弁護士は書類を掲げる⋯⋯

 次の瞬間、メンヘラ女が大きな金切り声を上げて発狂した。メンヘラ女の突然の豹変に、法廷内にいる誰もが驚き、両手で両耳を塞いだ。

「ちくちょー!やめろ!このやろうぉおおお!」

 メンヘラ女が自分の弁護士に掴みかかった。自分の弁護士にである。これに驚く弁護士⋯⋯メンヘラ女が弁護士のネクタイを引っ張り回す。弁護士はネクタイを強く引っ張られ首が締まり、白目をむいて意識を失いかける⋯⋯

 法廷警吏の鬼がこれを止めようとするも、メンヘラ女の蹴りが股間にクリーンヒット、法廷警吏の鬼はその場で悶絶して倒れてしまった。

 法廷内は一気に修羅場と化して、顔から血の気が引く閻魔大王⋯⋯

 パン☆パン☆パン☆

「はい!やめて!やめて!お願いだからやめて!」

 閻魔大王はガベルを鳴らしまくり警告するも、一向に治まる様子がない。閻魔大王が書記官の方を向き指示を出す。

「お~い、誰か。応援の警吏を呼んで来て!」

 次の瞬間、閻魔大王の側頭部に、メンヘラ女の投げた何かが吹っ飛んで来て当たり、裁判官席から横転するように床に倒れた。

 警吏が10人ほどやって来て、ようやく、混乱は収まった。

 法廷内はぐちゃぐちゃだ。

「ちょっと休廷します!てか、もう今日はおしまい。続きは明日!」

 閻魔大王は手で痛みを抑えなら立ち上がる。

「おやおや、大変な状況ですね」

 気が付くとジェーン・パックマンが法廷の出入り口に付近に立っていた。閻魔大王は彼に気づくと話をするため傍に歩み寄った。

「パックマン、お願いがあるんだけど⋯⋯」

「わかってますよ。彼女をデスタウンに留まらせるようにしますよ」

「もう、地獄も限界⋯⋯あんなの、流石に収容できないよ」

「地獄以上に地獄な場所がデスタウンにありますよ」

「それで改心して貰えば、地獄の手間が省ける⋯⋯」

「とりあえず、試験的に半年の契約をしてありますけど⋯⋯結果が良ければ、正式に代用地獄の運営を依頼します」

 パックマンの話によると、さらに現世のメンヘラ女も、夢を通じてお仕置きをすることで、希死念慮の消失も試みるとのことだった。地獄にこれ以上余計な者がやって来ないよう、抑止的な対策が講じられ始めた。