第39話 戦いの序曲
釈然としない思いで眠りに就く夕菜⋯⋯
まったく身に覚えがない。
以前からタルパ界隈で噂に聞く、惚気バッシングの対象となるような行為も一切していない。そもそも、まだ、タルパは完成していない。
まさか、いいねボタンが原因か?
実際、惚気ているタルパーのポストに、いいねボタンを押しただけで狙われる場合もある。しかし、惚気ているタルパーとはまだ絡んでいない。
謎が深まるも、疲れからそのまま深い眠りに落ちた⋯⋯
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一方、気絶させられただけで、浅い眠りに就いていた女もいた。
千夏はだらしなく緩んだ口元から涎を垂らし⋯⋯まぁ、いつもの夢を見ていた。森蘭丸になりきる夢だ。
「この惚気切った世界を変えてやる!」
白馬にまたがった千夏は、勇ましく刀を振り上げ、自軍の兵士らに対してそう鼓舞した。これから合戦にでも向かうらしい⋯⋯
「今日こそ運光の法力を倒してやる!」
千夏を先頭に行軍が始まる⋯⋯
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「なんや?大名行列か?ちんどん屋か?」
「戦国時代の行軍ですかね?」
小高い丘の上で腹ばいになり、双眼鏡で千夏の率いる行列の様子を見ている二人がいた。C子と先任伍長である。そう、ここは惚気島である。
どうやら⋯⋯
現在、千夏の夢と融合しているらしい。
C子は無線で近くのくぼ地で待機していた別班に連絡を取る。
「迫撃砲の用意できたか?」
《こちら、準備完了!いつでもどうぞ!》
一方、横にいた先任伍長は、狙撃用ライフルの設置準備を始める。
「パックマンの言うゴミとは、あいつか⋯⋯」
「でも、我々があのメンヘラ女をいたぶったところで、地獄に何の得があるんですかね?」
「今、地獄はメンヘラが増えて困っているらしい。生きている間に改心させることで、メンヘラを減らしたいんやろ?」
「寒い任務ですね」
「とりあえず、契約期間は半年や。それでこの島はうちらの国のもんや」
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どこからか⋯⋯
何かが飛翔して来る音が聞こえて来た。
千夏はそれに気づき空を見上げようとした瞬間⋯⋯あたり一面、爆発のようなものが次々と起こり、瞬く間に行軍はバラバラの状態となった。