第38話 バギーさん

投稿日 2024.01.13 更新日 2024.01.13

 銀行員を夢見た、旅行代理店もいいかな⋯⋯

 いやいや、私のような人間は航空会社に相応しい。華やかなゲーム業界もいいでしょう!千夏は⋯⋯そう、今日まで固く信じていた。

「なんで私が無名の食品卸なの!?」

 結局、岩鉄と南難茂夫の圧に負けて、入社の承諾をしてしまった。

 今はどうせ夏休みだし⋯⋯

 仕事は早い内に覚えて貰った方が助かると、明日から急遽、短大の後期授業が始まるまでの間、なんなん商事でバイトすることも決まってしまった。

 なんなん商事は、食品卸以外にも、直営レストランも運営しており、千夏はそこで働くこととなった。時給は¥1,200であるが⋯⋯岩鉄が今のこいつにはそれは多過ぎると固辞し¥300となった。

 夏休み明け後も、短大を卒業して、正社員として正式に入社するまでの間、土日祝日も¥300でこき使ってもらっても構わないと言い放った。 

「なんで私が時給¥300で働かなくちゃいけないのよ!」

 一人、部屋で怒りに震える千夏⋯⋯

 時刻は深夜11時に差しかかろうとしていた。直後、森蘭丸モードになり、低い男性のような声色に変わる。

 スマホを取り出すと、たらばがにオカルト板へアクセスする⋯⋯

 うっぷん晴らし(=誹謗中傷)の開始である。

「リンダぁあああ!やめろ!消えろ!」

 千夏の奇声が家の中を轟く⋯⋯

 しばらくした後⋯⋯

 階段を駆け上がる音がすると、部屋のドアが勢いよく開かれた。 

「おい、お前、何やってんだ!明日は8時出社だぞ!はよ寝ろ!」

「我が名は森ら⋯⋯」

 千夏がそう言いかけた直後、岩鉄はコブラツイストの技を千夏にかけて悶絶させ、そのままベットの上へ背負い投げして寝かしつかせた。

「とっとと寝ろ!このバカ娘!」

    :

 布団の中でスマホを見続ける夕菜⋯

 たらばがにオカルト板で自分の悪口が書かれていることに気づく。

「えええ!なんで?私、何も悪いことしてない!」

 憤慨して、そのことをゴンやトットフォーにDMで伝えるが、誹謗中傷は無視しろと説得され続けた。

 ゴン曰く⋯⋯

 誹謗中傷魔にバギーさんとあだ名を付け、面白がって遊んでいるバカもいるから相手にするなとの話だった。