第21話 イマジナリーフレンド所持者の忠告
穂都は飲みかけのアイスコーヒーをテーブルの上に置くと⋯⋯俯き加減になり、夕菜にこう問い質した。
「まさか⋯⋯実行しちゃった?」
「えっ?まぁ、そのぉ~実行しちゃいました!!なはは、は、は⋯⋯」
二人の間で、何か気まずい空気が流れ始める。
しばらく、謎の沈黙が数秒間続いた後、穂都は顔を上げ、夕菜の目をじっと見つめながら、こう話を切り出して来た⋯⋯
「イマジナリーフレンド所持者でもタルパに興味を持っている人は多いわ」
「えっ、じゃ~穂都ちゃんに聞いて見て良かったかな?わはは!」
「やめるなら今が最後のチャンスだと思う」
「えっ?」
穂都曰く。
失敗する者が多く、高い確率で最後はタルパが暴走状況に陥り、自滅するとのことだった。
タルパ暴走とは⋯⋯
タルパがまったく言う事を聞かなくなり、タルパを作った人間を攻撃し始め る現象のことだ。
最後は精神的に追い詰められ⋯⋯
最悪は発狂して自殺する者までいるらしいとのことだった。
そんな話は、雑貨屋の店主や占い館のシシルから、耳にタコができるくらい聞かされたが⋯⋯しかし、ネット上のタルパ界隈を間近で見ていた者の言葉は、あらためて、自身に至らない部分がまだ残されていた事を思い知らされた。
落ち込む夕菜⋯⋯
「ごめんね、変な心配をかけさせちゃって」
それに対して、一転⋯⋯申し訳なさそうになる穂都。
「夕菜ちゃん⋯⋯どうしてもやり続けたいなら、私に必ず相談して」
「うん、わかった」
とりあえず、一晩じっくり考えると伝え、もう遅い時間になることから、この後、すぐに二人は別れ帰宅することにした。
重い気分となり自宅に辿り着いた夕菜⋯⋯
「ゴンにも⋯⋯もう一回、相談して見ようかな⋯⋯」
玄関を上がり、自室へ向かおうとした次の瞬間⋯⋯背後から母に両こぶしで頭をグリグリされた。
「こら!不良娘!昼間はどこへ行ってた!?」
「あわわわ!その件につきましては⋯⋯」
結局、占い館に行って来たことを正直に伝え、二度とウソはつかないよう言い聞かされた。てっきり、占い館へ行くことを禁じられると思いきや⋯⋯次からは、きちんと正直に言えば良いとのことで済んだ。