正しいタルパの作り方
この物語は⋯⋯
ある女子高生の身に起きた、壮大なオカルトファンタジーになる。
とりあえず、話を進める前に⋯⋯
予備知識として「タルパの作り方」について、詳しく説明しておきたい。タルパとはチベット語で化身を意味し、精神を集中させることで作り上げる架空の命となる。エア友達に思えなくもないが⋯⋯似て非なるものとなる。
まるで、本当に生きている存在であるかの域までやり込むのだ。目で見えるようになるし、声も聞こえ、会話することすら可能となる。
ぶっちゃけ、統合失調症の幻覚や幻聴とほとんど変わらないため、作り方に失敗すると⋯⋯
精神病院送りとなるのは必至である。
元々は、師資相承な世界で知られるチベット密教の秘奥義であり、チベット密教の僧侶が厳しい修行を経て初めて成せる技となる。チベット密教の教えを知らずして、タルパを作り出すことはできない。
しかし⋯⋯
20年くらい前になるだろうか、某オカルト雑誌で取り上げられたのをきっかけに、一部のオカルトマニアで密かに流行り出した。
もちろん、本物のチベット密教のタルパを、雑誌で紹介されていた程度の内容で作れる訳がない。このため、瞑想を基本に西洋魔術やヨガなどの技で補完された、日本独自のタルパ、いわゆる「ネットタルパ」が編み出された。
その具体的な手順は以下の通りとなる⋯
1.自分が欲するタルパの容姿と性格を考える。
2.気でタルパの器(体に相当)を作る。
3.それを目で見えるよう視覚化の訓練を行う。
4.会話できるようにするため自動化の訓練を行う。
手順4まで成功したら、タルパが本当に生きている存在であるかのように動き出し、まるで本物の人間と会話しているような意思疎通が可能となる。
訓練は瞑想しながらのものとなり、人によって手順3と4が前後する場合がある。実際の手順はもっと複雑で、訓練自体にもいろいろ種類がある。さらに、詳しい情報が知りたければ、こちらの記事をどうぞ。
しかし、瞑想以外で⋯⋯ダイブや明晰夢、幽体離脱などの技を使い、タルパと出会う方法を編み出した者が現れた。
伝説の天才タルパー、浮き輪の登場である。
こうして⋯⋯タルパの世界に、新しい風が吹き込まれたのである。