第03話 夕菜の秘密
なぜ、夕菜にそのような確信が持てたのか⋯⋯
実は、小学校高学年になるまでの間に、明晰夢を体得していたのだ。
あの⋯⋯寝ている間に見る「夢」を自由自在に操れると言うものだ。睡眠不足になる恐れもあったため、週三回までとルールを決めて、毎夜、眠りの中での別生活を何年も楽しんでいたのだ。
タルパを作るためには、瞑想によるもの以外にも様々な方法があった。
ダイブと呼ばれる白昼夢を応用した方法や幽体離脱⋯⋯そして、夕菜が得意とする明晰夢によるやり方もあった。
やりたい好奇心を抑えられるはずもない。
「私なら本物のチベット密教タルパ⋯⋯作れそう」
そうと決めたら、まずは、自分が望む姿、性格をしたタルパの設計、デザインを行う必要がある。
夕菜は小さい頃に親から読み聞かされていた「不思議の国のアリス」に感激して、人間の言葉が理解でき話すことができる動物に憧れていた。
「作るなら、動物型のタルパが欲しいかな⋯⋯」
夕菜は白い子ウサギをタルパにすることに決めた。
性格は明るくて元気な男の子!
スケッチブックに子ウサギを描く⋯⋯
「これだわ!今晩、この子と夢の中で邂逅するんだ!」
夕菜はウィキサイト「タルパを全力で作ろうと思っているまとめ」の成功事例集に掲載されてあった「浮き輪」なるタルパ実践者の方法が、今の自分にぴったりだと考え、彼のやり方を真似ることにした⋯⋯
浮き輪なる人物のやり方は、ダイブや明晰夢を応用した夢見でのタルパとの邂逅によるものだった。今の夕菜に最適かつ最善な選択肢となる。
ただ、一つだけ気がかりな点があった⋯⋯
浮き輪は今から10年ほど前、タルパ戦争と呼ばれる騒動を起こした人物として、人工精霊・タルパ界隈で悪評が定着していたのだ。
「タルパ戦争⋯⋯一体、なんだろう?」
とりあえず、今はそれよりも自身のタルパ作成を優先することに決めた。
「そうだ!タル活専用のXアカウントを作成しよう!ブログも開設するわ!」
しかし⋯⋯
この一介のオカルトマニアの女子高生が⋯⋯
この後、ネット誹謗中傷被害を受け始めたのをきっかけに、異世界バトルに参戦することなろうとは、想像だにすることができなかった。