第42話 グレーゾーン

投稿日 2023.08.14 更新日 2023.08.14

湯世林いわく
だから一包だけの販売にしたそうだ
たしかに、このトトバース⋯デスタウンにおいては
幻覚作用のある薬は、想念⋯いや、日頃から抱いている妄想を
具現化してしまう恐れがあることは知られていた
故に中毒性のあるものの販売は
トドバースのいずれの国でも禁止されていた
具現化する確立は
数千回に1回起こるか起きないかで
まぁ、中毒性のない化学組成をしたものであったし⋯
1回くらいなら問題ないだろう
そう判断して調合、販売してしまったらしい
実は合法ではないが⋯違法でもない
取り締まる理由がないので電話による事情聴取は短時間で済んだ
巡査は電話を切ると
「わかった、誘拐の事件性はなし⋯」
と宣言した
細い目になるA子⋯
「で、あの子ら。これからどないすんねん?」
「警察で保護した後、児童保護施設に引き渡します」
岩凪が訴えるような視線を巡査に投げかける
「自分じゃダメですか?」
「君は間もなくあの世へ渡る予定だよね」
「デスタウンに残って育てたい⋯」
一同、顔を見合わせる
しかし、シシルは迷うことなく言った
「この子らは私が引き取る!!お前はあの世へ行け」
「でも⋯」
「はぁ!?てめぇは地獄で罪を償って来い!!」
項垂れるように落ち込む岩凪