第20話 去来
投稿日 2023.07.08 更新日 2023.07.08
夕刻も近くなり岩凪は凸や荘に戻ることにした
遥か彼方に聳える運幸大連峰を望む⋯
シャンプー市内⋯いや、ピータン王国のどこからでも望める光景だ
今日の大連峰は一際な黄金色に輝いていた
「ユセリアの何がダメなんだろう⋯」
今の岩凪にはユセリアと言う国は一縷の望みに思えていた
とりあえず、凸や荘に向けて歩み出す
シャンプー市内中心部から
その街はずれにある凸や荘まで歩いて小一時間だ
バスはあるが歩きたい気分だったので
そうすることにした
何よりも⋯
このピータン王国の神々しい光景は
現世では決して拝むことのできないものであった
天国ともなれは、きっとここ以上だろう⋯岩凪はそう達観した
しかし、それは叶わない願いである
やはり未認可の違法薬品を製造していたのは罪だ
ちなみに⋯
岩凪が作った幻覚薬は
磁石ジエン酸ニコリウムと言う磁性体有機化合物だ
こいつを経口摂取すると
脳の視床下部に影響を与えて望むものが見えるようになる
彼の場合は美少女であったのだ
「ノーベル賞級の大発見だと思ったんだけどな⋯」
そうこう現世に残して来た思いに囚われ続けている間
凸や荘に辿り着いた
A子から事前告知されていた通り
カレーの匂いがほのかに漂い岩凪の食欲をそそった
「A子さんにユセリアのことを尋ねて見よう」
岩凪は意気揚々と山荘の中へ入って行った