第19話 裏切られた期待
投稿日 2023.07.08 更新日 2023.07.08
岩凪の思いは見事に打ち砕かれた⋯
すぐ隣国でクーデター発生中の上、現在は国境が封鎖されている
どこの国の大使館もてんやわんやの状態であり
情報収集と本国との対応に追われていた
デスタウン移民の申請窓口を一時的に閉鎖していたり
開いていても審査を終えるまでかなりの時間を要する状況になっていた
岩凪に残された時間は後9日足らずだ
とても間に合わない⋯
「来世は美少女になって⋯婆さんに変わり果てて行くのか」
途方に暮れ、大通りのど真ん中で呆然と立ち尽くす
次の瞬間、不意に肩を叩かれる
振り向くと午前中に山荘で声をかけて来たあの弁護士だった
「あれ、今日は市内見学ですか?」
「え!?あ、ええ、あの世へ行く前にと思い」
「そうですか、移民申請のための大使館巡りかと思いましたわ」
「・・・」
「どこの大使館も混乱してますねぇ。商売あがったりですわ。わはは」
鬼の弁護士いわく
地獄での訴訟業務以外にも移民事務手続の代行もしており
通常より高い確率で承認されるよう
交渉もできると言う
しかし⋯状況が状況だけ
もう地獄へ帰ることにすると言う
「やっぱりすぐに受け入れてくれる国なんてないですよね」
岩凪はそれとなく⋯何気に聞いて見た
「なら、反対隣のユセリアですね。でも、おすすめはできません」
鬼の弁護士は
飛行機の時間が迫っていたため空港へ急いでいたようだ
去り際、念を押すように言った
「気が変わってもユセリアはダメですよ!!じゃー地獄で会いましょう!!」