タルパ戦争 File60 テストチャネリング
浮島は木口にこれまでの経緯を説明した⋯⋯
とりあえず、自身の霊力は高まった様子なので、今から試験的に木口とのチャネリング、共有ダイブを試みたいと提案した。
木口は一瞬ためらったが⋯⋯
承諾することにした。
「それじゃ、いったん電話を切るね。10分後くらいにダイブを開始する」
《わ、わかった⋯⋯僕もダイブの準備を始める。それじゃ10分後に⋯⋯》
ガチャ☆ツーツー
浮島は座禅を組み深呼吸を始める⋯⋯
精神統一を図り、木口との共有ダイブを試みる。しかし、すぐに木口の大きな異変に気づいた。
「なっ!これは⋯⋯」
心身とも満身創痍な状態にあるものの念との融合、共有ダイブに驚いた。
「木口君⋯⋯木口君⋯⋯」
同じ頃、木口は一人で落ちつける場所⋯⋯自宅の納戸に閉じ籠っていた。明美たちも明美たちでダイブを楽しんでいた。
納戸で座禅を組み⋯⋯浮島からの霊的コンタクトを待ち続ける。
「浮島さん⋯」
:
そこは屋久島の原生林を思わせる美しい場所だった⋯⋯
木口は浮島のダイブ界の中で佇んでいた。そこへ近くの巨木の裏から現れるように浮島が出て来た。
「これは一体どういうことだい?まるで⋯激しい霊障に襲われたような⋯⋯」
「タルパ界隈は本当にどうしようもないヤツが溢れかえっていますが⋯⋯中には更梨さんのような本物もいます」
「まさか⋯⋯タルパの暴走を見せかけるために、零君に本当に攻撃してもらったのか!?」
「ここまでしなかったらバレていた恐れがありましたよ」
「なんてことだ⋯⋯」
「黙っててすみません⋯でも、敵を騙すにはまずは味方からって言うでしょ?」
「もう、他に隠していることはないよね?」
「ないです。強いて上げるなら⋯⋯僕の妹、明美がどうやら戦端をすでに開いてしまったところでしょうか⋯⋯」
実質、タルパ戦争は始まっていた⋯⋯
その時ある。
浮島は父の叫び声を感じ取った。
「父さん?」
「どうしました?」
「今、京都の実家の方から父の声が聞こえた気がするんだ⋯⋯」
「いったんダイブを中止しましょう!京都の実家へ連絡を!」
「うん、悪い。そうする」