タルパ戦争 File58 コンビニ
これは数十分前の出来事⋯⋯
木口が自宅近くのコンビニへ買い物に出かけた時の話である。
「お腹が空いたな。UF⋯⋯ん?ペヤングの新商品か⋯⋯こっちにするか」
木口が手にしたものはペヤングの期間限定発売の新商品だった。
それをカゴの中へ放り込もうとした次の瞬間である⋯⋯突然、一人の女性により阻止された。
「ちょっと!いきなり何をするんですか!?」
「今、UFOを取ろうとしましたよね?どうしてペヤングに変えたんですか?」
アホ毛を立てたオタク風の若い女性だった。
「はぁ?そんなもの僕の自由じゃないですか。あなた何なんです?」
「どうしました的?」
客同士の押し問答に気づいた店員がやって来た。
「僕はペヤングを買いたいのに⋯⋯この女の人が無理矢理UFOを勧めて来るんです!」
「お知り合い的同士ですか?」
「いえ⋯⋯」
木口が否定しようとした瞬間、女性は大きな声でこれを遮って来た。
「この人こそ前世で私に対して無理矢理ペヤングを勧めて来たんです!これはカルマです!」
直後、意味不明な沈黙の時間が数十秒流れる⋯⋯
その様子を聞いていた他の客も含め、店内にいた全員が固まる。店員は死んだような目で女性を見つめこう答える。
「お願い的ですから他のお客様の迷惑的になるような行為的はやめて欲しい的」
「私は⋯⋯ただ私は⋯⋯」
「あの、もういいですか?僕、飢え死にしそうなんです。早く自宅へ帰ってペヤングを食べたい」
木口はレジで精算を済ませると、その場から足早に立ち去った。
女性が木口を追おうとしたのを店員が阻止する。
「警察呼ぶ的よ!いい加減して欲しい的!」
「あの人から特別な何かを感じるの!お願い!」
「わかった的!警察呼ぶ的!」
「すみません!すみません!ここに置いてあるUFO全部買いますから警察呼ぶのだけはやめてください!」
女性はUFOがいっぱいに詰められたレジ袋を両手に持ち⋯⋯
静かに店を去って行った。
「ター君、ごめん的⋯⋯一人でレジ大変だった的?」
「大丈夫だよ。それにしても⋯⋯繁忙時間帯にあんなのに来られるとたまらないな。出禁言い渡しても良かったんじゃない?」