タルパ戦争 File40 霊能者たちの申し出

投稿日 2024.06.23 更新日 2024.06.23

 木口はパソコンの前で唖然としていた。

 木口が見ていたものは、巨大掲示板たらばがにオカルト板であったが⋯⋯古参タルパーたちの書き込みに開いた口が塞がらなかった。

「宇宙神軍って何?俺を救済するって何だよ?」

「浩一!やっぱり、タルパ界隈の霊能者は揃いも揃ってクソ揃いだよ!全員詐欺師だよ!明日以降は普通でいいよ!」

「いや、浮島さんの計画を完璧なものにするためにも⋯⋯今、ここで手を抜く訳にはいかない。更梨さんのような本物もいる!」

 タルパの零は大声で泣きながら、木口の背中に抱きついた。

 その時である⋯⋯

「ふん!男のクセに大声で泣くなんてみっともない!」

 赤い着物を着た⋯⋯いや、第二次世界大戦の米軍の戦闘服を着た女の子が、木口たちの背後に立っていた。

「えっ!?もしかして、零や浮島さんが見えていた赤い着物を⋯⋯いや、着てないじゃん!座敷わらしの女の子って⋯⋯この子??」

 とりあえず、口調から明らかに妹、明美であることはわかった。

 零は状況が飲み込めずあたふたする。

 これまでは零にしか見えていなかったものが⋯⋯どうやら、今は木口に見えているらしい。

「Dデイ(金曜日)は間もなくね!楽しみだわ!暴れるわよ!」

「明美⋯⋯明美なのか?」

「そうよ!だから何?しばらく、お兄ちゃんにも見えるようにするわ。国際電話料金もバカにならないから」

「⋯⋯」

 言葉を失う木口。

 ふと、気がつくと⋯⋯自身のSNSアカウントのDM着信通知に気づく。

「なんだ?この気持ちの悪い文面のDMは⋯⋯」

 零と明美(の心霊ロボット、ダイブ体)がそれを横から覗く。

「ちゃす、タルパが暴走したそっすね。勝手ながら僕の方で霊視させてもらいましたぁ~。どうやら、こっちで対処できそっす。よかったら、今晩一緒に共有ダイブしませんか?返事待ちますぅ」

 木口は最初の数行だけ音読すると⋯⋯後は読まずに、深い⋯⋯とても深いため息をついた。

「なぁ、零⋯⋯これ、どうする?」

「無視する訳にはいかないよ⋯⋯それこそ、変に思われるじゃん⋯⋯適当に話を合わて様子を見てみよう」

 木口は零の助言に従い、続きの文章を読む。

 そして、ほくそ笑む明美⋯⋯