Episode 16 ヘソス神殿
自室に戻り、ベットの上で横になるB子⋯⋯
ポクシーから聞かされた話が気になって眠れない。軍人は休むのも仕事の内であったが⋯⋯艦内の資料室へ行って調べて見ることにした。
にわかに信じがたい話ではあったが⋯⋯
実際、多くのパイロットたちの間で目撃され、噂されていた。
空中管制指揮官はあらゆる状況に対応、的確な指示を迅速に下さねばならない。B子の職務に想定外は絶対に許されない。
明日の出航に備え、艦内はいつも以上に慌ただしかった。
こんな時に資料室で何かを読み耽ったり、調べ事をする者はいないだろう。案の定、資料室の中へ入ると、B子以外に誰もいなかった。
B子は国防省のネットワークに直結された情報検索端末の前に座ると、ID認証を済ませログインした。
「る、る、るーなえるばーど⋯」
カタカタ、パチン☆
すると⋯⋯
思っていた以上の数の資料がヒット、画面に一覧表示された。ざっと、100件は下らなかった。
しかし⋯⋯
タイトルからしてパイロットの目撃報告書のようなものばかりだった。その中に、ポクシーの現在の相棒であるサイポンの書いたものもあった。どれも端的に書かれたもので、特段、興味や関心を覚えるものはなかった。
「なんや、つまらんな⋯⋯」
その時である⋯⋯
一件だけ妙なタイトルをした資料を見つけた。
「ヘソス神殿調査ファイル?なんじゃこりゃ?」
ヘソス神殿とは、ヲティスタン共和国中央部の高原地帯にある⋯⋯
古代トゥルパ王国の遺跡である。数々の伝説が眠っており、その中に一つに思念凶獣ルーナエルバードの物語があった。
20年以上前に書かれたもので、著者の名は⋯⋯
ヘソ・ライト
ピクシティの大学で、自然哲学や錬金術を学ぶ大学院生だった。
「なんや!これ、おもろいやんか!」
B子は食い入るように資料を読み始めた。
「磁石ジエン酸ニコリウムによるエルフ魔法のコピー?なんじゃこりゃ?」
まったく関係ないものに興味を惹かれてしまうB子⋯⋯気がつくと、もう小一時間は端末の前にいた。
その時である⋯⋯
艦内巡視のMPがやって来た。
「すみません、身分証の提示お願いします」