タルパ戦争 File14 残留思念
浮島と木口は階段を上り始め、2Fへ向かう⋯⋯
木口は言った⋯⋯
「僕自身はこの家の中にいた座敷わらしをまったく感じることができなかったんですが⋯⋯それだけちょっと腑に落ちません」
「それだ。そうなんだ。僕もそう思った。木口君もそこそこの霊能者だ。少しくらい変な違和感を感じ取っていてもおかしくないはずだ。しかし、まったく気づけなかった⋯⋯まぁ、部屋の中を覗いて見れば、何かわかるだろう」
そして、二人は2Fの廊下の上に出て、問題の部屋の前へ向かう。
浮島はいきなりドアを開けることはしなかった。
まずは、ドアに手をかざして、部屋の中の様子を伺う⋯⋯ドアを開けた途端に攻撃して来る者も中はいるからだ。
「どうやら、悪意を持った存在ではなさそうだ。だいたい、わかった。このままもう一回客間へ戻り、作戦を練ろう」
「えっ、一端、引き返すんですか!?ドアを開けずに」
「うん、木口君にとても大事な説明をしておく必要があると判断した」
そうして、二人は先ほどの客間へ戻った。
浮島曰く。
霊能者のカンが鈍りやすく条件としてこんなものもあるそうだ⋯⋯
家族の念だ。
生まれた時から身近で接しているものであるが故、逆に気づき難いものらしい。どうやら、それと関係があるらしいのだ。
「木口君、いつも、あの部屋に入った時に感じるものは何?」
「えっ、そりゃ⋯⋯妹の部屋ですから妹の念ですね。正確には⋯⋯今は、父らと一緒にニューヨークにいる妹の残留思念ってやつですか」
「それだよ。木口君」
「えっ、まさか⋯⋯今、妹の部屋にいる座敷わらしが、妹の念で作られたタルパだったなんてオチ⋯⋯冗談でもないですよね?」
「いや、ある」
「⋯⋯」
「妹さんとはかなり仲が良さそうだけど?」
「そうですね。普通よりはいい方だと思います」
「妹さん⋯⋯こんな話するの失礼だけど、少し情緒不安定なところない?」
「それは⋯⋯ちょっとありますね」
「発生型タルパって知っているよね?たぶん、座敷わらしの正体は⋯⋯木口君の妹さんに由来するものかもしれない」
「⋯⋯」
「兄想いの妹さんを持ったようだね」
木口の顔から見る見る血の気が引き始めた⋯⋯