タルパ戦争 File13 使われていない部屋
翌日の午前中⋯⋯
浮島が木口の自宅にやって来た。
卒業後は実家の社を継ぐ予定なので、就職活動は一切していなかった。今は夏休みともあり、木口の要望通りに応えることにした。
一刻も早く⋯⋯
この不可解な問題を適切に処理した方が良さそうだった。
「本当にすみません、浮島さん。こちらへどうぞ」
「別にそんな堅苦しくしなくてもいいよ」
苦笑いする浮島⋯⋯
木口は浮島を客間へ通すと、お茶と茶菓子を出した。
「これは美味しいね!」
浮島は出された饅頭に舌鼓を打った。
どこの銘菓なのか気になり、包まれていた包装紙を広げ、小さく書かれていた文字を読む。
「木口満腹堂⋯⋯えっ、これってまさか⋯⋯」
「僕の父方のおじが腕のいい菓子職人で⋯⋯よく、持って来てくれるんです」
「へぇ、そうなんだ」
「ところで⋯⋯すでに何か感じてますかね」
「うん。それなんだが⋯⋯木口君の自宅前に立った瞬間、気づいたよ」
浮島曰く⋯⋯
東側の2F角部屋から強い念が出ていたのを感じられたそうだ。
そして、窓から浮島に対してだろうか⋯⋯じっと、睨むように見つめる⋯⋯赤い着物を着た女の子が顔を覗かせていたそうだ。
「⋯⋯」
緊張から顔を硬直させる木口⋯⋯
しかし、腑に落ちない。木口自身も浮島の指導で、そこそこ強い霊能力を獲得していた。なぜ、これまでの間、座敷わらしの存在を感じることができなかったのか謎であった。
「問題の部屋に入っていい?誰の部屋?」
「妹の部屋です。別に入っても問題ないです」
「じゃ、行こうか」
浮島はソファからゆっくり静かに立ち上がると、木口の方をじっと見つめ、こう言い放った。
「この先、何が起きても⋯⋯受け入れる覚悟あるよね?僕はそのために今日ここに来た。最終手段を行使する前に選択の機会は設けるけど⋯⋯時間はそれほどかけられないよ」
木口が最終的な決断を下すために与えられる時間は⋯⋯
わずか数十秒程度だろうと言われた。
「いいね?木口君。ただし、人命が優先なのは言うまでもない。命に関わるような事態に直面したら、僕は彼女を迷わず浄化する」
返事に躊躇う木口⋯⋯