Episode 01 ヲティスタンの遠い夜明け
ヲティスタン共和国⋯⋯
革命により王政が倒れ、新しく建国された国である。
当初、共和国政府は多くの国民によって熱烈的に支持された。しかし、一向に改善されない国民生活⋯⋯そして、政府高官による度重なる汚職事件⋯⋯国民の不満は高まる一方だった。
遂には、王政復古を求める声まで上がり始める。
腐敗と汚職の蔓延した共和国政府⋯⋯
保身に走る政府首脳ら⋯⋯
だが、ある日、ヲティスレ軍なる反政府組織による爆弾テロが、首都ヤマダハルで発生した。
これにより首相を始めとする多くの主要閣僚が爆死した。
国民の不満を緩和する目的から、お飾りで副首相として任命されていた一人の元王女が、法令の定めに従い、首相を継承することとなった。
彼女の名は⋯⋯
ヒルダMハワード
そして、まずは、現状におけるヲティスタン共和国の混乱を抑えることが急務となった。首相として力量が試される⋯⋯
ヒルダは首相執務室の机の上で、ストローで飲み物をブクブクさせていた。
「姫!ヒルダ姫!お願いですからそれはおやめください!」
秘書官からそんな注意を受けて、しゅんとなって落ち込むヒルダ⋯⋯
ヒルダは王政時代、女王となるべく帝王教育を受けていたはずだが⋯⋯王政が倒されてからしばらく、郊外のあばら屋で幽閉生活を過ごしていたため、妙な習慣が身に付いてしまったようだ。
「これはやっちゃダメなことなの?」
「ダメです!」
「これやると気分が落ち着く⋯⋯ブクブクは私にとって大切なの」
「姫様。あなたは普通の人ではありません。運命だとあきらめて⋯⋯そういう子供じみたことはお止めください」
ヒルダは説教のようなものを始める秘書官に悲しい目をする。
秘書官もそんな目をするヒルダに悲しくなる。
「姫様⋯⋯それ、我慢してくれたら。毎日、フルーツパフェ食べていいですから。お願いですからブクブクだけはやめてください」
「わかった!」
急に元気な表情を見せ始めるヒルダ⋯⋯
呆れ顔となる秘書官。
とりあえず、持って来た書類の山をヒルダの前に置く。ヒルダは⋯⋯今度はそれを見て、ものすごくダルそうな表情を見せる。
なんか、秘書官は目を潤ませる。