タルパ戦争 File11 イマジナリーフレンドとの邂逅
零は中学生くらいの年齢をした容姿端麗な美少年だった⋯⋯
しかし、これは木口の趣味ではない。
木口には幼い頃にイマジナリーフレンドがいたのだ。小学校に上がる頃までには、いつの間にか消えてしまっていた。
嬉しい時も悲しい時も同じ時を過ごした。
零は木口が自身の遠い記憶を辿り⋯⋯浮島の指南によりダイブ界で復元された存在、そう、変遷型タルパとしての一面も持っていた。
ただ、自分と同じくらいの歳であったのだが、時の流れの影響だろうか⋯⋯中学生のくらいの姿で現れた。
当時の姿のままでの邂逅となるだろう。
木口はそう考えていたが⋯⋯
タルパ作りは想定通りに行くことはまずない。
所望していた条件の半分も満たされれば良い方だろう。兎にも角にも、零は木口にとって⋯⋯かけがえのない心の友だ。
絶対に失いたくない。
しかし⋯⋯
「あっ、そうだ⋯⋯零。その赤い着物を着た女の子さぁ。どんな感じ?」
「えっ、まぁ、可愛い子だよ。愛くるしいよ」
「そっか⋯⋯中学生と高学年の子なら年齢的につり合いが取れるよね?」
「えっ、マスター。それ、どういう意味?」
「零がその子をお嫁さんに貰えば、すべて話が丸く収まる」
「え、ええ!」
浮島は⋯⋯
口を開け、きょとんとした表情で二人の会話を聞いていた。そして、直後にクスクスと笑い出した。
「それは良い考えだね。零君、どうだい?」
零は赤面してその場から姿を消して、木口の意識の中へ戻って行った。
しかし⋯⋯
この時の木口の何気ない提案が⋯⋯
後の起こるであろうタルパ戦争の要となるのであった。
「ところで、話は変わるけど⋯⋯法政大学の更梨君って知ってる?」
「噂には聞いたことあります。たしか、オカルト雑誌モーでも紹介されていたオカルト研究家ですよね?」
「彼は僕たちの計画の大きな障害要因になるかもしれない」
浮島が懸念していた⋯⋯
事前に下調べをしておく必要のあるものとは⋯⋯
法政大学の更梨のことだった。
噂では⋯⋯
良く言えば慎重な人物と言えるが、猜疑心からのものに近いとも思える、冷淡な観察眼を持つ男としても知られていた。