タルパ戦争 File04 共鳴
人混みでごった返す新宿駅で、立ちくらみをする木口⋯⋯
どうやら、少し飲み過ぎたようだ。
いや、疲れていたのかもしれない。少し休憩しようと、ホーム上のベンチに座ることにした。
霊能力を持った者が人混みに入ると⋯
とにかく、疲れる。
多くの人たちの思念の渦にも巻き込まれるからだ。
「大丈夫かい?マスター」
「ああ、大丈夫だよ。零⋯⋯少し、ここで休むよ」
「ここ(新宿駅)は本当に強い念で渦巻いているな⋯⋯」
「そうだね。あまり長居もしたくない場所だね」
その直後である⋯⋯
木口の身に不可思議なことが起きた。
突然、離人症のような症状に襲われ、視野がどんどん狭くなる。耳鳴りのような音にも襲われ、聴覚も完全に現実世界から遮断された。
「なんだ!?これは一体⋯」
気がつくと⋯⋯
幽界で実体化されたタルパの零が木口の目の前に立っていた。そう、木口は今、幽界に引き込まれた様子だった。
普段、ダイブや明晰夢で見る光景とは違う⋯⋯
「ここは一体どこだ!?」
「マスター!誰かのダイブ界に引き込まれたようだ!」
「しまった⋯⋯油断した」
「でも、大丈夫。僕がいるからね。それに⋯あまり悪い人のじゃなさそうだ」
「偶発的に共鳴したのか?」
「どうやらそうらしいね。ほら、君のすぐ後ろだよ」
零にそう言われ、木口が後ろを振り向くと、小学校高学年くらいの二人の女の子と⋯一人のスケバン風の女子高生がいた。
幽界の中は、精神と時の部屋のように、全体的に白いモヤのようなものに包まれており、何もない空間だった。
ただ、女の子たちと女子高生の姿勢から、自分が今座っていたベンチの⋯ちょうど、反対側の席に座っている様子だと察することができた。
すると、女子高生が木口と零の存在に気づいた⋯⋯
「おや、珍しいね。あんた達は⋯⋯能力者かい?」
「どうやら、うっかり共鳴したようだね」
零が女子高生にそう返答する。
「どうしたの?エシャロット?」
「なんでもないよ。さぁ、今日はもう遅い。早く家へ帰ろう」
「うん」
女子高生はどうやら⋯⋯
一人の女の子の守護霊の様子だった。