第98話 仕事を奪われた死神
ジェーン・パックマンが、再び同じ場所にやって来た⋯⋯
「約束の時間なのに⋯⋯いないですね」
パックマンはあたりを見渡し、エシャロットの念を確認する。そして、すぐに感知することができた。
しかし、それは意外な場所⋯⋯いや、物から発せられていた。
「人形から?」
それはどうやら、すぐ真下の様子だった。パックマンはそのままの姿勢で屋根を通り抜け、穂都の部屋に入り込んだ。
「おやおや、マスターさんは随分とぐっすり眠っているようですね」
パックマンは本棚に置かれた人形の前へ移動すると、人形の眼を凝視し始めた。瞳の奥には⋯⋯日本から遠く離れた地にいる、エシャロットの姿が映し出されていた。寺院らしき建物の中で、高僧と思しき人物と話し込んでいた。
「これは、一体⋯⋯」
困惑するパックマン⋯⋯
次の瞬間、青年僧侶の顔面ドアップに視界を遮られる。
「うわ!」
青年僧侶の鋭い眼光が、パックマンの頭を突き抜けるように⋯⋯痛く差し込んで来た。慌てて目を逸らすパックマン⋯⋯
「今日はひとまず退散します。死神の仕事を邪魔する者は⋯⋯後できっちり落とし前を付けさせてもらいますからね」
パックマンはその場から姿を消し、あっち側の世界へ帰って行った。
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「こちら側を遠視していた者がいたようなので撃退したぞ」
「相手は中国か?」
「いや⋯⋯相手は死神だな。あんたがそいつを横取りしたからじゃないか?」
コラパップとタイラーのぶっきらぼうな対話が続く。それを横で困惑気味な表情で聞いているエシャロット⋯⋯
「あたいはこれから⋯⋯ダイブ界へ行くんだね」
「そうじゃ。基本的にダイブ界での作戦行動となる。まぁ、たまにあの人形を通じて、あの子へ会いに行っても良いぞ」
「ぜんぜん、気づいてもらえなかったけど。一体、どういうことだい?」
「そのうち、気づいてもらえるようになる。あと、言い忘れておったが⋯⋯これもそのうち、夢の中でも合えるぞ」
「夢の中?夢の中でも合えるようになるのかい?」
「ああ、そのうち、いろいろ解かって来るようになる」
コラパップはエシャロットの質問に対して⋯⋯
ただ、意味深に答えるだけだった。