第91話 オカルト自衛隊
シシルはこう思った⋯⋯
林千夜は、少しだけ天然ボケの入った女性なのだと⋯⋯しかし、まぁ、浮島のことだから⋯⋯多分、大丈夫だろうと信じた。林の所属する大学は浮島の母校でもある。何か特別な縁でもあったのだろうと考えた。
しばらくすると、入口からノックする音が聞こえて来た。
ノックの音にもキョどる林⋯⋯
「浮島さんと木口さんがやって来たようね」
シシルはソファから立ち上がると、出迎えに入口へ向かった。
「遅れてすまない!もしかして、林さん⋯⋯先に来てた?」
「もう来てるわよ」
「じゃ、早速、本題に入ろうか」
こうして⋯⋯
浮島、木口、シシル、林の四人による対談が始まった。
浮島は前置きをすることなく、本当に本題から切り出して来た。
「中露の動きが活発化している。年内にも⋯⋯今は暫定的な処置でも構わないので、早急な対策が必要だ」
「で、私達それぞれが⋯⋯具体的に何をすればいい?」
シシルも忌憚なく切り返す。
浮島は深呼吸をすると⋯⋯淡々と説明を始めた。
「今ままでは個別的な対応だったが⋯⋯まず、林さんは技術面、木口君には行政や法令面から、我が国の心霊防衛体制の構築、整備を行ってもらいたい」
「ねぇ、防衛省にも研究所みたいなのあるわよね?」
「残念ながら⋯⋯こう言った方面に関して、省内でまだコンセンサスが取れていない。この先も難しいだろう」
「林さんはオカルト研究会のメンバーだったの?」
「うん、その関係から研究をお願いしている。まさか、一般の私大で国家機密レベルの研究が行われているなんて⋯⋯誰も思わないだろうし、いい隠れ蓑にもなる。林さん自身も霊感はあるし信用できる」
「で、私は?」
「シシルはダイブが得意だよね。恐らく⋯⋯この日本で君の右に出る者はいないだろう。霊的領土侵犯はダイブ界を介する形で行われている。現実世界のみならず、ダイブ界での防衛体制も構築、二段構えの対策をしておきたい」
「これから⋯⋯夜な夜なダイブか」
「寝不足でシシルの美貌が損なうのは忍びない。特別手当を支給するよ」
「まぁ、浮き輪ったら」
木口と林はただ二人の会話を聞いているだけだったが⋯⋯緊張から顔を強張らせていた。