第81話 イマジナリーフレンドの使命
新しい服を着て喜ぶ穂都⋯⋯
エシャロットはその様子を微笑ましく見ていた。そして、穂都との別れも近いことを悟り始めていた。
自分の使命も、もう、そろそろだろう。
どうやら⋯⋯
穂都の新しい母親は本当に良い人である⋯⋯そんなカンを覚え、安心していた。しかし、悲しさを抑えきれず、思わず嗚咽をこぼしてしまった。
それに驚く穂都⋯⋯
「ど、ど、どうしたの!?エシャロット!!」
「ごめんよ⋯⋯なんだか、あまりにも嬉しくて。良かったね!穂都!」
「う、うん。新しいお母さんか⋯⋯でも、少し不安」
「きっと、いい人だよ。心配ないよ」
「うん⋯⋯ちょっと、まだ複雑な心境だけど⋯⋯これから新しい生活が始まりそうだね!エシャロット!」
「そうだね」
それは、あの日⋯⋯
エシャロットが亡くなった日の話である。
地獄の閻魔大王の裁きにより、地獄行きが確定したが⋯⋯エシャロットの仲間を思う気持ちに免じて、執行猶予的なチャンスが与えられていたのだ。
そのチャンスとは⋯⋯
とりあえず、魂をもう一回だけ、エシャロットが息を引き取った病院へ戻すので、誰かの守護霊としての役割を果たすように命じられていたのだ。
そして、守護霊としての使命をきっちり果たし終えたら⋯⋯
天国行きとなることを約束していたのだ。
最初は適当な誰かに取り憑いて、適当に守護霊として役割を果たし、天国へ行こうと考えていた⋯⋯
しかし、穂都の成長過程と共に歩んで行くうちに、自身の心の中で、何か一つの⋯⋯大きな変化のようなものも起きていた。エシャロットの中では、天国行きはもはやどうでも良くなっていた。
天国行きが発動する条件は⋯⋯
取り憑いた相手が最高の幸運を手にした時だった。
どうやら、その最高の幸運は⋯⋯穂都の新しい母親の出現となりそうだ。
嬉しいやら悲しいやら⋯⋯
エシャロットの気持ちは複雑に揺れ動いていた。最終的に地獄へ落ちてもいいから⋯⋯できれば、このまま穂都を見守り続けたい。
そう願い始めていた。
しかし、守護霊が特定の人間に執着すると、それこそ、ただの背後霊となりかねない。穂都のためにも⋯⋯潔い最後を決意した。