第52話 友からの忠告
穂都は夕菜からのDMを読んで唖然とした。
「よりによって、あんなやつに関わるなんて⋯⋯」
怒りで全身が震えていた。
遠井穂都⋯⋯
そう、タルパ界隈で名を知られた⋯⋯古参の一人である。
幼い頃からエルフに憧れ、ネット上ではデーモン小暮のノリで、自称200歳のエルフの女王、トットフォーを演じていた。
自身のXのプロフィール画像も、ファンタスティックな自画像のようなものに設定していた。実は、穂都の父、穂積は大手消費者金融の役員で、徹底した現実主義、合理主義者だった。それに対する嫌気から⋯⋯
穂都は夕菜への返信を作成するため、スマホの画面を食い入るに見つめ、猛烈な勢いでタップし始めた。
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タルパ界隈住人のSNSコミュニティは⋯⋯
某中古車販売/買取店のLineグループの如く⋯⋯反応が早かった。まるで、スマホやパソコンの前に常時張り付いているのかと思うくらいであった。
穂都やゴンからの返信はもう来ているだろう。
夕菜は朝食を手早く済ませると、急いで自室へ戻る。そして、スマホを確認すると⋯案の定、二人からの返信があった。
「えっ」
しかし、普段より感情的で熱のこもった文面に驚く夕菜⋯⋯さらに、穂都、ゴン、二人とも、ほぼ同じ内容だったのだ。
「あいつに関わるな⋯⋯」
たしかに、巨大掲示板たらばがにオカルト板での、ワタシノフスキーの評判は最悪であった。
今から数年くらい前だろうか⋯⋯
以前は静かにブログを更新していたのだが、アンチのある発言を発端に、その正体が顕となったらしい。圧倒的に女性が多いとされるこの世界で⋯⋯下品な小学生ギャグを乱発して、タルパ界隈を引っ掻き回し始めたのだ。
中でも、現実逃避乙wwwの彼の発言は、穂都の怒りを呼び覚ますのに、十分であったのは言うまでもない。
倉持も当初は説得を試みたが⋯⋯
日に日にエスカレートして行く彼の”弄り行為”に絶望視していた。
誹謗中傷は放置に限る⋯⋯それが、倉持のタルパ界隈における一貫した姿勢であった。
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倉持は⋯⋯
窓の外を漫然と見つめながら、深いため息をつく⋯⋯
「おっさんは煽り耐性ゼロのアホだわ」