第51話 こっちの世界情勢
現実の地球と似て非なる世界だった。
どことなく似てはいるが⋯⋯まったく、違う。しかし、よく似ている。
ユーラシア大陸っぽい大陸はユーセリア大陸と呼ばれ。
北アメリカ大陸っぽいところは北クロレリア大陸、そして、南アメリカ大陸は同様に南クロレリア大陸と呼ばれていた。
オーストラリアは南ロードシア、アフリカ大陸はアトランティナ大陸と言った具合だ。グリーンランドはカギア島と呼ぶらしい。
そして、惚気島はちょうど現実の地球で言うハワイ近くの赤道直下にあり、ガトー公国と言う国はハワイの位置にあった。どうやら、ユセリアは旧ソ連(ロシア)に相当するらしい⋯⋯
それにしても⋯⋯
アトランティナ大陸を支配するタロフルヤ共和国と言う国は⋯⋯
八丁味噌を主体とする食文化の国である様子から、どうも名古屋のパロディと思われる。その真意や意図のようなものは定かでない。
さらに⋯⋯
現実の地球の中央アジアには⋯⋯ウィキスタン、ヲティスタン、アナテスタンと言う謎の三共和国が連なっていた。まるで、タルパ界隈の主要三サイトを当てこすったような感じのする国々だ。
タルパ界隈では⋯⋯
タルパ界隈のとある重鎮の主張により⋯⋯
タルパ実践者(タルパー)は、各自が独自の精神世界を構築しており、それを源泉にタルパが作られるものと考えられ、定説となっていた。そして、各自が独自に作る精神世界は⋯⋯スラングとして「国」と呼ばれた。
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倉持は夕菜からのDMを読んで激怒していた。
「ワタシノフスキーがまた余計な事をしたなぁあああ⋯許せない!!」
怒りで全身が震えていた。
倉持文子⋯⋯
そう、タルパ界隈に名を知られた⋯⋯前出のとある重鎮だ。
芥川龍之介をはじめとする新技巧派文学に憧れ、小説家を目指し、自宅で家事手伝いをしながら執筆に励んでいたのだ。
自身のX本アカのプロフィール画像も、大正時代を思わせる古風な自画像のようなものに設定していた。実は、文子の父、文雄は大学教授で、とある大学の文学部長を務めていた。その影響も大きかった。
文子は夕菜への返信を作成するため、パソコンの画面を食い入るに見つめ、猛烈な勢いでキーボードを叩き始める。