第50話 交錯する二つの世界
夕菜があっちの世界へ消えると、C子とランカは発令所へ戻った。
すると、航海長が水測員と何か話し込んでいた。
「あ、そうそう、艦長、ユセリアの艦艇二隻うろついてますわ」
「何ぃ~またかいな。あいつらホンマしつこいな」
「どうします?また、例のちょっと特殊な音響魚雷でも放ちます?」
「せやな⋯⋯ただ、そう何本も積んどらんし⋯⋯あまり消費したくないわ」
「でも、このまま留まられたら、明日の作戦に支障が出るかと⋯」
「コーストガードの連中は何やってる?」
「いちおう、巡視艇が近くで監視しているようですが⋯⋯追い払うまでは」
「せやな。例のちょっと特殊な音響魚雷を使うか」
直後、ランカが眉間にしわを寄せる。
これに気づいたC子が言う。
「ああ、前回はすまんかった。今度はドリフネタで行くわ」
「大音量の〇ロボイスだけはやめてくださいね!」
「クソ真面目なユセリアどもにはアレが一番効くんだが、なはは」
:
夕菜は朝の目覚めを迎えた⋯⋯
「うーん、よく寝たのかわからないな⋯⋯」
上半身を起こして、両腕を上に伸ばし、大きなあくびをした。
枕元に置いてあったスマホを手に取ると、明晰夢で見た内容を穂都とゴンに報告してみることにした。
そして、DMを送り終えると、朝食をとるため一階へ降りる。
その時、玄関の扉が開く音がする。父の帰りだった。
「おう!今⋯⋯今、帰った⋯⋯つ、疲れたわ」
「あ、お父さん、お帰りなさい。お母さん!お父さん帰って来たよぉ」
台所から母の返事が聞こえて来る。
その日は当直ではなかったが、緊急のオペを行わなければならない状況に直面して、それが深夜にまで及んでしまったそうだ。
夕菜は父の鞄を手に取る。
聞けば、〇殺を図った10代の少女を助けるため、全力を尽くしたそうだ。
「まったく、バカな子だよ。回りの人間も迷惑するのに⋯⋯」
医師としてやるべきことはやったので、後は山場を乗り越えるだけらしい。昏睡状態は今も続いているとのことだ。
「シャワー浴びて仮眠したら、午後にも病院へ戻るわ」
心配そうに父の顔を見つめる夕菜⋯⋯医療現場は常に修羅場だ。