第50話 交錯する二つの世界

投稿日 2024.02.09 更新日 2024.02.10

 夕菜があっちの世界へ消えると、C子とランカは発令所へ戻った。

 すると、航海長が水測員と何か話し込んでいた。

「あ、そうそう、艦長、ユセリアの艦艇二隻うろついてますわ」

「何ぃ~またかいな。あいつらホンマしつこいな」

「どうします?また、例のちょっと特殊な音響魚雷でも放ちます?」

「せやな⋯⋯ただ、そう何本も積んどらんし⋯⋯あまり消費したくないわ」

「でも、このまま留まられたら、明日の作戦に支障が出るかと⋯」

「コーストガードの連中は何やってる?」

「いちおう、巡視艇が近くで監視しているようですが⋯⋯追い払うまでは」

「せやな。例のちょっと特殊な音響魚雷を使うか」

 直後、ランカが眉間にしわを寄せる。

 これに気づいたC子が言う。

「ああ、前回はすまんかった。今度はドリフネタで行くわ」

「大音量の〇ロボイスだけはやめてくださいね!」

「クソ真面目なユセリアどもにはアレが一番効くんだが、なはは」

     :

 夕菜は朝の目覚めを迎えた⋯⋯

「うーん、よく寝たのかわからないな⋯⋯」

 上半身を起こして、両腕を上に伸ばし、大きなあくびをした。

 枕元に置いてあったスマホを手に取ると、明晰夢で見た内容を穂都とゴンに報告してみることにした。

 そして、DMを送り終えると、朝食をとるため一階へ降りる。

 その時、玄関の扉が開く音がする。父の帰りだった。

「おう!今⋯⋯今、帰った⋯⋯つ、疲れたわ」

「あ、お父さん、お帰りなさい。お母さん!お父さん帰って来たよぉ」

 台所から母の返事が聞こえて来る。

 その日は当直ではなかったが、緊急のオペを行わなければならない状況に直面して、それが深夜にまで及んでしまったそうだ。

 夕菜は父の鞄を手に取る。

 聞けば、〇殺を図った10代の少女を助けるため、全力を尽くしたそうだ。

「まったく、バカな子だよ。回りの人間も迷惑するのに⋯⋯」

 医師としてやるべきことはやったので、後は山場を乗り越えるだけらしい。昏睡状態は今も続いているとのことだ。

「シャワー浴びて仮眠したら、午後にも病院へ戻るわ」

 心配そうに父の顔を見つめる夕菜⋯⋯医療現場は常に修羅場だ。