第49話 海軍の建前
これまでの経緯を詳しく話す夕菜⋯⋯
C子は黙って聞き続けた。
ただ、眉間にしわを寄せており、何か気まずいものも徐々に感じ始めた。とりあえず、一通り言うべきことを言い終える。
しかし、謎の沈黙がしばし続く。
まさか、ポンスケの引き渡しを拒否されるのでは⋯⋯
ポンスケはランカの腕の中に抱きしめられたままだった。
次の瞬間、C子が口を開く。
「どうやら、パックマンのことはなんも知らんようやな⋯⋯」
「えっ?パックマンって⋯⋯なんですか?」
「いやなぁ、そいつは死神で、今、うちらと取引をしている」
「し、死神!?私、なんか呪われているんですか!?」
「安心せぇ、どうやら無関係のようや」
「⋯⋯」
「逆にお前ならなんか知っとると思ってな。ここまで連れて来た」
どうやら、今後の取引を有利に進めるため、ジェーン・パックマンと言う死神の弱みを探っていたらしい。
まぁ、夕菜には関係のない話だ。
「あの、それでポンスケは⋯⋯」
これに問いに対して、腕を組み悩み続けるC子⋯⋯
頭を後ろに倒し、天井を見つめる。
「せやなぁ⋯⋯お前がウソついているように思えんし⋯⋯ただなぁ」
C子曰く。
こっちの世界では、獣人にも人権があり戸籍があり、勝手に連れ出せば誘拐の罪にも問われかねないと言う。
また、ガトー公国海軍で保護した以上、はいそうですかと⋯⋯安易に引き渡せないとも告げられ、結論は先送りとなった。
「ただ、このポンスケいうウサギ⋯⋯いつどこから侵入したんやろな」
謎は残されたままとなったが⋯
次に、夕菜は今後の流れについて説明を受けた。
ぶっちゃけ、もう二度と惚気島にやって来て欲しくないので、必要な手続きをした後、そっちの世界へすぐに引き渡しに行くので、それまで待っていろとのことだった。まぁ、夕菜の主張は認められるだろうとの話だった。
「わかりました。いったん元の世界へ帰ります」
しょんぼり顔になる夕菜⋯⋯
直後、目覚まし時計の音が聞こえて来た。
はっとする夕菜⋯⋯
「私、もうそろそろ行きますね」
「おう、楽しみに待っとれ」