第43話 ジビエ料理が好きな艦長
惚気島の付近に、二隻の怪しい艦艇が接近していた。
C子らが極秘作戦のため、再び再上陸する際、いつも通り、航海長のおっさんに留守を任せることにしていたのだが⋯⋯
現状において、この惚気島は地獄が直接統治、管理し、防衛的な実務は、C子の国が地獄からの委託を受け担っていたのだ。しかし、地獄のこの裁定に強い反対の意思を示し、惚気島の領有権を強く主張して譲らない国があった。
ユセリア社会主義共和国連邦⋯⋯
笑うことを禁じられた共産趣味国家である。
ちなみに⋯⋯C子の国はガトー公国と言い、一年中クリスマスの平和な立憲君主国である。そして、この潜水艦の名は「はまぐり」と言った。
見た目は、海上自衛隊そうりゅう型であるが、タルパニウム原子炉を搭載した原子力潜水艦である。
「ユセリアの駆逐艦と海洋調査船⋯⋯まだ、うろついてますね」
「艦長たちの作戦を知られると何かと不味いな」
ランカの言葉に、航海長のおっさんは眉間にしわを寄せ、思案に暮れる。その時、艦長室の方から大きな音が鳴り響いた。
「おい!誰だ?音を立てるな!」
「艦長室の方から聞こえましたけど?ちょっと、私見てきます!」
艦長であるC子は、島に上陸中だ⋯⋯
誰もいないはずなのだが、ネコの爪研ぎ音のようなものまで、ガリガリと鳴り始めた。発令所にいる者たちは互いの顔を見合わせる。
「ランカ!とりあえず、早く原因を突き止めろ!」
「うぃっす!」
しばらくすると⋯⋯
艦長室から謎の音は鳴り止み、ランカが一匹の小さいウサギを抱きかかえ、発令所にやって来た。
「なんじゃ?それ?」
「艦長が内緒で飼育していたんでしょうか?」
「いや、それは絶対ないと思う」
「え~そうですか?ジョナサン・アーチャーも艦長室で犬を飼ってましたよ!」
「だとしても、あの人は食い意地が強いから⋯⋯あ~ここだけの話だぞ。とっくの前に、みんなの胃袋の中に入っていると思う」
「艦長のウサギじゃない?」
発令所にいた者は、全員、首を縦に振り、航海長に同意する⋯⋯
たしかに、以前⋯⋯
はまぐりを沈めようと、船体に穴を開けようとしたゴンと言う名のキツネを食べようとした出来事もあった。