第36話 運命の交錯

投稿日 2024.01.12 更新日 2024.01.12

 壁際は段ボール箱が積み上げられ、倉庫とも似ても似つかない場所で、南難との面談は始まった。

「あなたが岩鉄の娘さんか⋯⋯」

「俺の娘で良ければ採用してくれないか?」

「もちろんだよ!募集をかけてもなかなか人が来なくてねぇ」

 アメリカの投資銀行ピーマン・ブラジャーズの倒産から早数年、世界経済は完全に回復していた。

 就職市場も売り手市場となっていたのだ。

「あとは千夏さん次第だよ」

 そう、南難が告げると、岩鉄は千夏に睨みを利かせる。

「ほら、どうした、礼を言わんか!」

「あ、ありがとうございます!」

 キョドる千夏⋯⋯

「ところで、千夏さんは将来、結婚するならどんな男性が理想ですかな?」

「お、お父⋯⋯」

「なるほど!岩鉄みたいな男性ですか!ははは」

「お父さんみたいな人じゃない人です!」

 直後、南難は硬直して、岩鉄は飲みかけのお茶を噴く⋯⋯

「ははは、たしかに、岩鉄は真っ直ぐな男だから⋯女子たちの間で好みが分かれていましたよ」

 気まずい空気をどうにかしようと、南難は高校時代の思い出話を始めた。

 豈井岩鉄と南難茂夫の二人は⋯⋯

 伝説の不良エリート校、凸都館高校の双璧として名を馳せていた。二人は一人の女番長、通称エシャロットを巡り、ケンカしたこともあったらしい。

 昔話に花を咲かせる中年おやじ共。それを横から仏面で聞く千夏⋯⋯

「そう言えば⋯⋯もうすぐ、エシャロットの命日だったな」

「今度、二人で墓参りに行くか!」

「生まれ変わったら誰かの守護神になるだなんて言っていたけど⋯⋯」

「彼女らしいよな。ははは」

 このエシャロットと呼ばれた女番長は⋯⋯

 若くしてガンで亡くなっていたのだ。死の直前、見舞いに来た岩熱と茂夫、凸都館同級生ら一同、号泣したらしい。

 父の知らなかった一面に驚く千夏。

 ちなみに、エシャロットが亡くなった同じ病院の同じ時間帯に、この物語のある人物がこの世に生を受ける。

「元気な女の子の赤ちゃんですよ~!」

 看護師に抱きかかえられた赤子を受け取る男性がいた。男性はベットで安静にしている妻に向かってこう言った⋯⋯

「この子の名前は穂都にしよう!」