第23話 惚気島
そう言えば⋯⋯
うんこ⋯⋯いや、運光の法力と言うサイトがある事を思い出した。
掲示板上でも、ご多分に漏れず、激しい批判と非難を受けていた。レスを細い目で流すように見つめ続ける夕菜。
「あの変態サイトか⋯⋯やめろ?消えろ?なら、見なきゃいいじゃん!」
運光の法力は、タルパ界隈危険度リストNo1として列記された。
それにしても、この謎めいたリストを投稿している者は、何をもって危険だと名指し、批判しているのか⋯⋯夕菜には訳が分からなかった。ただ、文体から誰かに似ているような気がした。
「森蘭丸ってタルパの文体そっくりじゃん!?」
しかし、確証はない⋯⋯
戸惑う夕菜。それもそうであるが⋯⋯運光の法力なるオカルト系ブログを運営している者も気になり始めた。
「アレクサンドル・ワタシノフスキーぃ?」
もちろん、ロシア人である訳がない⋯プロフィールを見ると、東京都出身の占い師らしい。夢占いを得意とし、夢の研究も続けているらしい。
読む気すら起きないブログであったが⋯⋯
夕菜が今一番関心を持っていたダイブに関して、わりと真面目な考察もしていた様子から、興味が湧き始め読んで見ることにした。
彼のダイブ界は独特だった。
どこか遠い宇宙にある⋯⋯
地球とよく似た惑星で、現実の地球と同様、たくさんの「国」があり、様々な国際社会問題を抱えている様子だった。
「えっ、これって⋯⋯」
直後、夕菜の背中に電気のようなものが走り、全身が鳥肌で震え、離人症のような不思議な感覚に襲われた。
そう⋯⋯
夕菜が自身の夢の中で見た惑星とまったく同じものだった。
ポンスケと思わしき存在とファースト・コンタクトした場所、例の島もきちんとあった。夕菜のイメージと完全に一致していたのだ。ちなみに、島の名は「惚気島」と設定されていた。
夕菜は我に返ると、ゴンへ再びDMを送る。
ゴンの話によると、恐らく⋯
どこかで、ワタシノフスキーなる人物のダイブ界に関する記事を知らぬ間に読んで、それが無意識に刷り込まれたのではないかとの指摘だった。
しかし、仮にそうであったとしても⋯⋯
何から何まで一致していた点は偶然には思えなかった。