第18話 成吉シシルの予感
成吉シシル⋯⋯
美しいロングヘアをした20代後半の女性だった。占い師をする傍ら、このビルの別の階では、雑貨輸入業の会社も経営しているとのことだった。服装はOL風で至って普通。イメージしていたのとは大違いだった。
とりあえず、夕菜はこれまでの経緯をシシルに打ち明けた⋯⋯
30分と限られた時間だ。事前に頭の中で整理して、まとめておいた内容をそのまま伝えた。
すると、シシルは⋯⋯
「時間なら気にしなくていいわ」
特別サービスで延長は無料と言って来た。シシル側も夕菜の話に興味があるようで、むしろ、逆に質問したいことがあるとの話だった。
以降⋯⋯
オカルト好きな女性同士で話に花を咲かせる。
最後にヒーリングと称し、夕菜の額に手かざしをする。仄かに暖かいオーラのようなものを感じる。
小一時間くらい互いに話込んだだろうか⋯⋯
どういう風の吹き回しか、シシルは楽しかったからお金は要らないと⋯⋯これまた妙なことを告げて来た。
流石にそれは悪いからと⋯⋯
夕菜の強い希望で、壁際に展示されていたオカルトグッツを一つ買うことにした。それは魔術師が付けるような指輪だった。
シシルが夕菜にそれを渡す前、両手で包み込み、何かを念じる⋯⋯
「シシルさん、今日は本当にありがとう!」
今後のダイブ界作りに役立つ情報を多く指導してもらえた夕菜は、最後は感激するような大きな声で礼を言いその場を去った。
「これで理想のダイブ界が作れるわ!」
喜びながら自宅へ戻る⋯⋯
:
一方、シシルは夕菜が去った後、あごに手を当てて、神妙な顔つきになり考え事をしていた。すると、スマホを取り出しどこかへ電話をする。
「もしもし、浮き輪?今、時間いい?」
今、シシルは浮き輪と口にした⋯⋯あの伝説の人物である。
「今日、面白い子がやって来たわ」
シシルは浮き輪に夕菜に関する詳しい情報、話を伝えた。咄嗟に、売り渡した指輪に念を封印してことも告げた。それが夕菜の近くにあれば⋯⋯夕菜の身に起きる変化もわかるらしい。
ただ、それは悪意を以ってやった訳でなく⋯⋯
自らの過去の苦い経験から、しばらく、見守りたい気持ちなったからだ。