第12話 この世とあの世の中間世界(デスタウン)
雑貨屋の店主から得た情報は⋯⋯
本場チベット密教におけるタルパの作り方のみならず、夕菜が本意としていたところまで話が及んでいた。
明晰夢を利用して、夢の世界でタルパと邂逅する方法についてもだ。
同じ明晰夢使いであるゴン⋯⋯厳密には、ゴンのマスターである倉持にも、情報提供を兼ね、衝撃的に感じた部分について、タルパ界隈の先人、重鎮としての意見、見解も聞いてみたい意欲に駆られた。
衝撃的に感じた個所とは⋯⋯
雑貨屋の店主、曰く。人間は死ぬと⋯⋯
いきなり、あの世⋯⋯つまり、天国、または、地獄に辿り着く訳ではないらしい。この世とあの世の間には「幽界」と呼ばれる世界が広がっており、まずはそこで、自らの生前の行いを省みながら旅をするのだと言う。
デスタウンとも呼ばれる中間世界だ。
人間、寝ている間に見る「夢」の世界は、もっともデスタウンに近接するとの話であった。
つまり、夕菜のやり方は⋯⋯
幽界での何がしかの出会いとなり、自分が理想とするタルパとの邂逅を求めているつもりでも、良からぬ存在と遭遇して、それに意識を乗っ取られるリスクの方が高いから、通常の作り方で挑戦するのが良いとの話だった。
確かに⋯⋯幽界は魑魅魍魎な存在も跋扈している。
その多くは動物霊やこの世に強い未練を残した者たちの霊魂などだ。神格級の存在は皆無に等しく、そのような中で邂逅は難しいとの話であった。
その一方で⋯⋯
デスタウンのある特定地点を介する形で、タルパ実践者同士が思念を交換し合うことも可能との話も聞かされた。
恐らく⋯⋯
これは浮き輪の「共有ダイブ」と同じ話だろう。そんな感じで、夕菜はゴンといろいろ話をして見たい意欲に駆られていた。
自室へ戻り、スマホを食い入るように見つめる夕菜⋯⋯
どうやら、ゴンも夕菜が聞いて来た話の内容に驚愕している様子だった。
夕菜は、雑貨屋の店主から、最後にこんな話もされた⋯⋯
池袋駅の向こう側に、デスタウンに詳しい女性タロット占い師がいることを教えられた。どうしてもデスタウンに興味があるなら、彼女の話を聞いて見てからにした方が良いかもしれないと助言された。
その占い師の名は⋯⋯成吉シシルと言うらしい。