第10話 易者とのオカルト対談
そして、金曜日の夕方――
学校が終わると、夕菜は件の雑貨屋へまっすぐ向かうことにした。
書店のおやじの話では、易者でもあるとの事だが⋯⋯
言われてみれば、雑貨屋の店主は人当たりの良い老紳士で、如何にもそのような雰囲気を醸し出していた⋯⋯そんな記憶がある。
ただ、何も買わずに話を聞こうとするのも失礼だ。ちょうど、タルパ用の依り代として、新しいパワーストーンも欲しかったことだし⋯⋯その次いで、話の流れから上手い具合に聞き出そう。夕菜はそう決めた。
いよいよ、雑貨屋の前に辿り着く⋯⋯
他に客がいたら店主とじっくり話ができない。店内の様子を確認する。
と思ったら⋯⋯
偶然、夕菜の視線の先に店主がおり、目が合ってしまった。
「おや、何か探し物かい?」
「えっ、あ、そ、その⋯⋯以前、ここで石を買いまして!」
キョどる夕菜。思わず大きな声で返事してしまった。しかし、店主は笑みを浮かべ、ゆっくりと店先に出て来た。
「ご利益はあったかな?」
「ええ!!もちろん!!第一希望の高校に合格しますた!!」
「そうかい、次は大学かな?それで新しい石をご所望かな?」
夕菜は黙ってうなずくと、店主に案内されるよう店内に入り、パワーストーンがたくさん飾られた棚の前に立った。どれも中高生のこづかい程度で買える良心的な値段で、どれを依り代にしようか迷った。
夕菜は商品を眺めながら、恐る恐る聞いてみることにした⋯⋯
「あの、タルパについて何か知ってますか?」
次の瞬間⋯⋯
店主の顔色が見る見る変わる。
「アレは絶対にやっちゃいかん!」
「えっ?」
突然の店主の豹変に驚く夕菜。
店主曰く⋯⋯
作り方を間違えたり、失敗すると、間違いなく精神に異常を来すので、絶対にやめた方がいいとの話だった。その時、生まれて初めて「統合失調症」なる病名をリアルで耳にすることとなった。
しかし、夕菜も黙って引き下がる訳には行かなかった。
自分は明晰夢使いでオカルトにそこそこ知見があること。そして、それを用いて、タルパと出会うための方法を模索していることを打ち明けた。
店主も、夕菜の態度の急変に驚き、目を丸くした⋯⋯