第06話 不思議の国の夕菜
思念界と言うものは⋯⋯
各方面で様々な呼び方がされていた。
オカルトの世界では、一般的に「幽界」や「アストラル界」と呼ばれ、霊界の一種とされていた⋯⋯早い話、この世とあの世の中間世界になる。
都市伝説界隈では「デスタウン」と呼ばれていた。
一方、タルパ界隈では「内界」や「ダイブ界」等と呼ばれ、界隈的にはダイブ界の言葉が定着している様子だった。
ダイブ界とは⋯⋯
基本的には、ダイブと呼ばれる精神没入行為でトランス状態となり、起きた状態で堪能する「夢」の世界となる⋯⋯
白昼の明晰夢と言ったところになるだろう
しかし、幽体離脱や一般的な明晰夢による方法で行く世界のことも、ダイブ界と呼んでいるようだった。
気がつくと、時刻はもう正午を回ろうとしていた。
「夕菜!!起きているの!?もうお昼よ!!日曜日だからってダメよ!!」
一階から母親の声が鳴り響く。
「あ~も~今、いいところなのにぃ⋯⋯」
夕菜はしぶしぶ一階の食堂へ降りた。
夕菜は食事を忘れるくらい⋯⋯ゴンの話に魅惑され、自身の夢の世界作りに没頭していたのだ。とりあえず、しばらくの間は、タルパとの邂逅は後回しにして、ダイブ界作りである。
「夕菜、テストが終わったからと言って勉強さぼっちゃダメよ」
夕菜の母親が、台所で皿を洗いながら、そうぼやく⋯⋯
「大丈夫よ!私は立教大学に行くんだから!!」
今度はリビングでテレビを見ていた夕菜の父親が、ため息をつくようにぼやき始めた⋯⋯
「おいおい、歩いて行ける距離だからってのが志望動機じゃないよな?」
「ひどい!親の負担をできるだけ軽くしようと考えてる娘に対して!」
「じゃ、立教大学に落ちたらどうすんだよ?」
「ちょっと遠いけど⋯⋯駅(池袋)の向こう側に大学がいくつかあるでしょ!」
夕菜の父と母は互いに見つめ合い呆れる。
「何か、もっとこう、やりたい事とか⋯⋯将来の夢はないのか?」
「そんなもの大学に入ってから決めるわ」
ぶっちゃけ、文系学部ならどこでも良かった⋯⋯
夕菜はそそくさを昼食を済ませると自室へ戻り、再び、タルパを全力で作ろうと思っているまとめへアクセスした。