第06話 不思議の国の夕菜

投稿日 2023.12.09 更新日 2023.12.09

 思念界と言うものは⋯⋯

 各方面で様々な呼び方がされていた。

 オカルトの世界では、一般的に「幽界」や「アストラル界」と呼ばれ、霊界の一種とされていた⋯⋯早い話、この世とあの世の中間世界になる。

 都市伝説界隈では「デスタウン」と呼ばれていた。

 一方、タルパ界隈では「内界」や「ダイブ界」等と呼ばれ、界隈的にはダイブ界の言葉が定着している様子だった。

 ダイブ界とは⋯⋯

 基本的には、ダイブと呼ばれる精神没入行為でトランス状態となり、起きた状態で堪能する「夢」の世界となる⋯⋯

 白昼の明晰夢と言ったところになるだろう

 しかし、幽体離脱や一般的な明晰夢による方法で行く世界のことも、ダイブ界と呼んでいるようだった。

 気がつくと、時刻はもう正午を回ろうとしていた。

「夕菜!!起きているの!?もうお昼よ!!日曜日だからってダメよ!!」

 一階から母親の声が鳴り響く。

「あ~も~今、いいところなのにぃ⋯⋯」

 夕菜はしぶしぶ一階の食堂へ降りた。

 夕菜は食事を忘れるくらい⋯⋯ゴンの話に魅惑され、自身の夢の世界作りに没頭していたのだ。とりあえず、しばらくの間は、タルパとの邂逅は後回しにして、ダイブ界作りである。

「夕菜、テストが終わったからと言って勉強さぼっちゃダメよ」

 夕菜の母親が、台所で皿を洗いながら、そうぼやく⋯⋯

「大丈夫よ!私は立教大学に行くんだから!!」

 今度はリビングでテレビを見ていた夕菜の父親が、ため息をつくようにぼやき始めた⋯⋯

「おいおい、歩いて行ける距離だからってのが志望動機じゃないよな?」

「ひどい!親の負担をできるだけ軽くしようと考えてる娘に対して!」

「じゃ、立教大学に落ちたらどうすんだよ?」

「ちょっと遠いけど⋯⋯駅(池袋)の向こう側に大学がいくつかあるでしょ!」

 夕菜の父と母は互いに見つめ合い呆れる。

「何か、もっとこう、やりたい事とか⋯⋯将来の夢はないのか?」

「そんなもの大学に入ってから決めるわ」

 ぶっちゃけ、文系学部ならどこでも良かった⋯⋯

 夕菜はそそくさを昼食を済ませると自室へ戻り、再び、タルパを全力で作ろうと思っているまとめへアクセスした。