第36話 シシルの占い館

投稿日 2023.07.23 更新日 2023.07.23

もう夜の10時近くになるだろうか⋯
夕食の提供時間も終わり従業員達も次々帰宅して行く
そして、いつものように
一人事務室で作業に追われるA子
そろそろ岩凪が帰って来る時間だろうと思い
今日に限り正面玄関は開けたままの状態にしてあった
やがてドアベルがカラン♪コロン♪と鳴る音が聞こえて来た
「帰ってきたか⋯」
A子が事務室からロビーへ出て見ると
成吉シシルと岩凪が立っていた
「おりょ?シシルじゃまいか!!」
「おっす!!今日からしばらくここに滞在するぞ」
「わかった。なら、いつもの部屋でええな?」
「ただで泊まれるならあそこでもいいわ!!」
満面の笑みのシシル
対して岩凪は放心状態に近く
完全に脱力し切って憔悴している様子であった
「てか、お前ら⋯なんで一緒にいる?」
「たまたま同じバスに乗り合わせて席が隣同士だったの」
毎年、この時期になると⋯
成吉は別荘地の富裕層相手に占い商売をするため
ピータン王国にやって来ていたのだ
もちろん、A子は岩凪の異変も妙に気になっていた
「おい、腹減ってるか?何か用意するぞ」
「いえ、食欲がないので⋯今日はこのまま風呂に入って寝ます」
「そうか⋯あまり無理するな」
その直後⋯かつ丼食べたいと猛烈にアピールするシシル
「私がここで占い館を開くとパンも飛ぶように売れるわよ!!」
「わかった!!食堂で待っとれ!!」
しぶしぶ厨房へ入って行くA子