第18話 新たなる旅立ち

パーカーのフードを深く被り
山荘からうつむき加減で静かに出る酒酒
先ほどの巡査が見張っていたのか⋯再び、Ａ子たちの前に姿を現した
しかし、迎えに来た鬼は外交官特権を盾に職質を拒否
自分の娘だと言い張り車に乗せた
あくまでもパンを買いに来ただけの客として
別れの挨拶を交わすことなくＡ子は酒酒を送り出す
そしてこうつぶやいた⋯
「ふ～う、一件落着やな⋯元気でな」
恐らく⋯
後は空港から地獄行きの便に乗ってピータンから離れるだけだろう
外交官特権を利用して
　　　：
その一方で⋯
新たなる決意に闘志を燃やす男が後から出て来た
岩凪裕である
その場で立ち尽くしていたＡ子に声をかける
「今日はちょっとシャンプーの市街地を見学してきます」
「お、おお。気ぃつけてな」
たまたま声をかけられ
軽い気持ちで弁護士の相談に乗っては見たが⋯
やはり、デスタウン定住がいい
市街地へ行けばデスタウン主要各国の大使館がありそこで申請可能だ
なんだか意気揚々と歩いて行く岩凪の背中を見て
妙な感じがしたためＡ子が叫ぶ
「今日の夕飯、カレーにするで！！あまり遅くなるな！！」
岩凪は片腕をあげてＡ子に向かって手を振った
そうこうしている間に
デスタウンを旅して来た死者たちが山荘に集まり始めて来た
しかし、酒酒と岩凪のこの後の運命は⋯思わぬ方向に転じるのであった